2018 Fiscal Year Annual Research Report
子どもへの教育支援に対する支持の研究:サーベイ実験による検討
Project/Area Number |
18J00978
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武居 寛史 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 教育 / 世論 / サーベイ実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実験は研究計画全体の主となるものの1つであり、医療支出に対する賛否を題材として、子どもを(実質的な)受益者とする福祉支出に対する人々の態度形成要因に関して検討した。昨年度に別の予算で教育支出に関する実験をできた一方、結果が教育という特定の文脈に限定されるのではないかという懸念が提起されたため、先行研究でも扱われている政策領域である医療支出に関して検討を行った。 実験では、受給者に関する情報などを回答者に無作為に割り当てることによって、受給者やその周囲の人の情報が政策態度に与える効果を検討した。具体的には、受給者の健康改善意欲が人々の政策態度に持つ効果が受給者の年齢や健康改善に対する親の不熱心さによって異なるかを検討した。実験は日経リサーチ社の回答者プールを利用して実施した。分析の結果、受給者本人に健康改善意欲があまりないときには人々は福祉支出に反対する傾向が高くなることが分かった。また、受給者が健康改善意欲を持つことによって賛成が増加する程度は、親の健康改善に対する協力意欲が低いときに小さくなることが分かった。つまり、健康改善の意欲が高いことは医療支出の支援への支持につながるが、不熱心な親がいる場合は子どもが足を引っ張られることを意味している。先行研究は、失業保険の受給者の就労意欲といった福祉支出受給者の「ふさわしさ」に関する情報(deservingness)を手掛かりとして、人々が政策態度を決めていることを示している。本研究は、このような「ふさわしさ」の判断が、受給者本人がコントロールしにくい要因にも影響されることを示すという形で研究群に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画通りに予定していたサーベイ実験を実施した。今年度の結果は、既に実施されている教育費の支援にかかわる実験の結果をほぼ再現しており、相互の結果を補強するものとなった。近年の政治(心理)学の論文では複数の実験結果をまとめて1本の論文を構成することが多いため、更なる実験を実施する必要があるが、来年度実施する実験の一部とあわせて論文化することができると考えている。このため、おおむね順調に進展していると判断した。なお、繰り越し分の予算で実験した小規模な予備的実験の結果についても今後の論文に発展させられるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、研究計画に従いさらにサーベイ実験を行う予定である。来年度の実験はアメリカの回答者を対象としている。このため、Amazon Mechanical Turkにおいて回答者の募集を行う予定である。実験では、家計の事情により就学費用の支援を受けている仮想的な生徒や学生の情報を回答者に提示し、その受給者に対する支援への支持を回答してもらう。また補助的に、受給者を家計の事情で医療費の支援を受けている場合に関しても、同様にアメリカの回答者を対象としてサーベイ実験を実施して回答を収集する計画をしている。この実験については、既に実施した日本で得られた結果との比較を行う予定である。福祉国家研究では多国間の比較を行うことが多いため、本研究についても日米で結果にどのような異同が見られるかについて検討する予定である。 また本年度までに得られた結果(研究が進展した場合は翌年度の結果も含む)を学会で報告する予定である。報告先としては、計量政治学の研究集会や実験政治学の研究集会を予定している。
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