2019 Fiscal Year Annual Research Report
子どもへの教育支援に対する支持の研究:サーベイ実験による検討
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18J00978
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武居 寛史 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 教育 / 世論 / サーベイ実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に従いサーベイ実験を行った。本年度の実験はアメリカの回答者を対象としている。このため、Amazon Mechanical Turkにおいて回答者を募集した。実験では、家計の事情により就学費用の支援を受けている仮想的な生徒や学生の情報を回答者に提示し、その受給者に対する支援への支持を回答してもらった。また補助的に、受給者を家計の事情で医療費の支援を受けている場合に関しても、同様にアメリカの回答者を対象としてサーベイ実験を実施して回答を収集した。 本年度実施した実験の結果を大まかにまとめると以下の通りになる。第一に、受給者に就学意欲がない場合は子ども(中学生)への就学支援への支持が大人(大学生)への就学支援への支持に比べて高かった。一方で、本人の就学意欲が高い場合には支持の程度は変わらなかった。この結果は日本で得られた結果と同じである。つまり、どちらの国でも子ども(中学生)に関しては本人の意欲がないことが許容される一方、本人の意欲があることの効果は大人(大学生)の方が高いという結果になった。第二に、親が子どもに対する教育に関心を持っていない場合、受給者の教育支援に対する支持が高くなるという結果になった。これは日本の結果と逆の傾向を示しており、日本の場合は親の教育に対する関心が低い場合には受給者本人の就学意欲が高くとも支援の支持ののびが小さくなるという結果となっていた。つまり、家庭環境が受給者にとって好ましくないときアメリカでは就学支援への支持が高まるのに対し、日本では同様の環境が就学支援への支持ののびを小さくする傾向が観察された。これらの結果については、早稲田大学で開催された計量・数理政治研究会の研究集会、ならびに東北大学で開催された実験政治学の研究集会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画にあった実験を実施した。このため基本的に研究は想定した進度で進捗している。近年の政治(心理)学の学術誌では複数の実験結果をまとめて1本の論文を構成することが多い。特に、比較研究が行われることの多い福祉国家研究に関連した研究においては、複数の国の回答者を対象として実験を行うことが多い。予算額と必要とされる回答者プールの質などの兼ね合いから、研究計画では論文の主たる結果となる実験を1年度に1つずつ実施する予定であった。本研究の2年目が終了し、予定していた主たる実験が2つ完了した。主たる統計解析は本年度中にに完了し、実施してきた実験については論文にまとめて投稿することが可能である。このため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の1つ目の実施作業は論文執筆である。昨年度までで日本とアメリカ両国の回答者を対象に実験を行い論文1本相当のデータが集まったため、これらの結果をまとめた論文を執筆する。論文の投稿先は政治学一般を扱う学術誌、もしくは政治心理学を専門とする学術誌を予定している。 また、昨年度に引き続きサーベイ実験を行い人々の政策態度の検討を行う。本年度の実験では大学生に対する(返済の必要のない奨学金のような)就学費用の支援に対する人々の政策態度について検討する。具体的には、参加者がオンラインで質問に回答する以下のような実験の実施を予定している。参加者は仮想的な支援の受給者やその家庭にかかわる情報を与えられ、その受給者への支援に対する賛否を回答する。もしくは、2名の受給者の情報を比較して、どちらがより受給にふさわしいかを回答する。この受給者の情報については、受給者の就学意欲、専攻内容、成績、また受給者の家庭環境などを入れることを予定している。回答者は、日本で実施する場合には日経リサーチのような企業の回答者プールを、アメリカで実施する場合にはAmazon Mechanical Turkを用いる予定である。なお、研究実施の上では倫理面の配慮が必要となる。研究計画は昨年での大学の倫理審査を通過しているので、申請内容に従った研究を行う。これらの研究により人々の態度形成要因を明らかにする。特に人々がどの程度大学教育への支援を稼得能力が高い人材を生み出すことへの投資と捉えているかを検討する。
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