2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rebuilding History of Postwar Okinawan: Focusing on Labour Issues and Financial Administration under U.S. Occupation
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18J01046
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
古波藏 契 明治学院大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 沖縄近現代史 / 農民運動 / 宮古島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も前年度に引き続き、冷戦史研究をはじめとする超地域的な歴史研究の潮流との接続を意識して研究を進めた。前年度までは、米国ビジネスや国際労働運動など、グローバルに活動するアクターが沖縄戦後史の中で果たした役割に着目して研究を進めてきた。本年度はそれに加えて、地域の対面的なコミュニティを統治機構の一環として取り込もうとする米軍当局の統治政策の実態に焦点を当てた。特に、米国統治期の沖縄における労働運動・農民運動の組織化過程を明らかにするとともに、これに対して米軍当局はどのような政策的統制を加えたのか、その実態の究明に力を入れた。それにより、〈下からの運動の組織化〉と〈上からの政策的統制〉との交錯関係から沖縄戦後史像を捉え直す視点の構築を目指した。 具体的な分析対象としては、1965年7月に宮古島で発生した製糖会社合併阻止闘争を取り上げた。この闘争は戦後沖縄における農民運動が最も先鋭化したものであり、沖縄統治の安定化を図る米軍当局も、憂慮すべき事態と受けとめた。この闘争を検討することにより、戦後沖縄において住民が展組織した運動のあり方と、これに対する統治者側の対応の仕方を明らかにすることができると考えられる。主な史料としては、組合・政党機関紙、米軍当局の内部資料を使用し、闘争の過程における農民組合、村落のリーダー層、施政者等、各々のアクターの動きと関連性を分析した。 研究の成果は、論文として『沖縄文化研究』(第47号、2020年3月)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度上半期には、当初予定よりも大きく進捗した。6月には在米資料調査を実施し、沖縄現地では入手不可能な米軍統治時代の資料を収集した。また、継続的に沖縄本島や宮古島に足を運ぶことで、米軍統治下沖縄における農民運動や、宮古島の状況について記録した貴重な資料の収集に成功した。これらの主題は、従来の沖縄戦後史研究において看過されてきたが、新史料の発見・分析によって、その重要性を指摘し、成果を論文にまとめて学術雑誌上に発表した。 しかし、2月以降は、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、実地調査を伴う資料収集が困難となった。電子化された資料や遠隔複写サービスを利用し、研究を継続しているが、研究活動に大きな支障をきたしている。また、研究成果発表の機会も減っている。 以上より、本年度の研究の進捗状況は、やや遅れていると評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新型コロナウイルス感染症の収束状況に応じて、柔軟に研究を遂行する。昨年度までの研究成果を単著等のかたちでまとめつつ、来年度以降の研究のための予備調査に徐々に軸足を移す。特に、本課題を遂行する中で見えてきた新たな主題として、官公労労働運動や、60年代沖縄における農民運動について、継続的に調査を進める。 ただし、対面での聞き取り調査や、海外渡航を伴う資料調査等については、当面の間、実施を見送る。国内の資料調査については、遠隔複写サービスを利用しつつ、最低限度の実地調査を行うことで可能な限り当初の計画に沿った研究遂行を目指す。 当面は昨年度中に収集した資料の整理・分析に注力する。
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Research Products
(4 results)