2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of unrealistic temporal self-appraisal: Viewpoint from cross-cultural comparisons
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18J01883
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千島 雄太 京都大学, こころの未来研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 自己評価 / 文化比較 / 文化心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,3つのデータセットを取得し,時間的自己評価の文化差に関して証拠を示した。 1.日本人縦断データ(約800名):日本人を対象としたWeb調査を行った。調査は,同じ対象者に1年間の間隔を空けて2回実施した。対象者は,Time 2の時点で,1年前とのつながりを想起する「連続条件」,1年前との断絶を想起する「非連続条件」,何も想起しない「統制条件」の3群にランダムに分けられた。従属変数を,「非現実的な人生満足感の上昇(主観的上昇-客観的上昇)」とした分散分析を行った結果,どの条件においても得点に差が見られなかった。従属変数を,主観的上昇にした場合であっても,結果は同じであった。北米で行われた先行研究では,非連続性を意識するほど主観的上昇が高まることが示されているため,本研究の結果は連続性が及ぼす影響に文化差があることを示唆していると考えられる。この点は,来年度の調査・実験によって明らかにしていく必要がある。 2.日本人・アメリカ人・カナダ人縦断データ(Time 1のみ; 約1,500名):日本人・アメリカ人・カナダ人を対象とした,調査を行った。その結果,先行研究の通り,日本人は,カナダ・アメリカ人に比べて,現在・未来の人生満足感が低いことが示された。1年後に追跡調査(Time 2)を行い,1年前を振り返った際の人生満足感の評価が,文化によって異なるかを検討する。 3.シンガポール人縦断データ(Time 1のみ; 約700名):シンガポール人を対象とした調査を行った。分析の結果,1年後の人生満足感の予測は,現在の人生満足感よりも高いことが示された。1年後に追跡調査(Time 2)を行い,予測された満足感と実際の1年後の満足感を比べることで,非現実的な評価が何によって生じるかを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り着実に研究を遂行した。シンガポールでの調査は研究計画にはなかったもの,調査対象を拡大したことは文化比較研究の観点から有意義であったといえる。様々な統計手法を習得し,インパクトのある分析結果を残している。研究計画通り,本年度からカナダのWilfrid Laurier Universityの長期滞在を開始し,海外での研究が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,以下の三点である。第一に,各縦断データの取得を完了し,時間的自己評価の文化差について検討を行う。第二に,縦断調査で明らかになった文化的要因に焦点を当て,実験操作によってその効果が再現されるかを検証する。具体的には,時間的自己連続性,自己高揚・自己改善動機の文化差に着目する。第三に,これまで得られた結果や,来年度得られる結果について,積極的に学会や論文で発表を行う。
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