2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J10535
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
辻 由依 北海道医療大学, 心理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 物質使用障害 / 家族支援 / CRAFT |
Outline of Annual Research Achievements |
Community Reinforcement and Family Training(CRAFT)は物質使用者の家族を対象とした支援方法であり,物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復を目的とする。CRAFTは行動理論に基づいているが,家族のどのような行動が変化しているのかは明らかではない。 研究1ではシステマティックレビューを用いて家族の行動の変化を整理した。英語論文13編,邦文論文1件の計14件を対象に行ったシステマティックレビューの結果,家族の行動の変化を測定している研究は2編であり,社会的活動の増加と物質使用者の物質使用行動を強化する家族の行動の減少が確認された。物質使用者の向社会的な行動を強化する家族の行動は検討されていたが変化は確認されなかった。 一方,物質使用行動を強化する家族の行動および向社会的行動を強化する家族の行動が変化する前提として,家族が機能分析の手続きを理解していることが必要になると考えられた。研究2では,物質使用行動を機能分析の視点からどの程度理解しているのかを確認する「機能分析の理解度チェックリスト」を作成した。地方都市の大学生と行動理論を学んだ専門家を対象として信頼性と妥当性を確認した結果,十分な信頼性(Kuder-Richardson 係数 = 0.72)が確認され,大学生と専門家間のチェックリストの合計得点に有意な差が確認されたことから妥当性を有しているチェックリストであることが示された。 CRAFTによって変化する家族の行動を明らかにすることによって,CRAFTを行う上でどのような家族の行動に着目し支援を行えばよいのかを検討することが可能となる。また,家族が物質使用行動を機能分析の視点からどの程度理解しているのかを明らかにすることで,家族の理解度に応じたより適切な支援を行うことが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CRAFTは行動理論に基づいており家族の行動の変化が重要視されるが,CRAFTによってどのような行動の変化が家族に生じているのか,またどのような家族の行動がCRAFTの目的とする,物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復と関連しているのかは明らかではない。実際にCRAFTを実施する前に,システマティックレビューを行い,家族のどのような行動について検討されているのかを明らかにし,CRAFTを行う上で焦点を当てる家族の行動について整理する必要が生じた。また,システマティックレビューを行った結果,家族の社会的活動と物質使用者の物質使用行動を強化する家族の行動および物質使用者の向社会的な行動を強化する家族の行動に焦点が当てられていたことが明らかとなった。 一方,CRAFTでは家族に機能分析の教育を行う手続きも含まれている。物質使用者の行動を強化する家族の行動は機能分析の手続きをどの程度理解しているのかによっても変化すると考えられたため,家族の機能分析の理解度を確認するツールを作成することが有効であると考えられた。 システマティックレビューおよび,機能分析の理解度を確認するチェックリストの作成は当初の予定には含まれていないが,当初の研究目的である,CRAFTによる物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復といった効果を検討する際に考慮すべき重要な点であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
システマティックレビューの結果,家族の行動の変化を確認している論文が2編のみであり,CRAFTでは家族の行動の変化を重要視する一方で,客観的な指標を用いた検討は十分に行われていないことが示された。今後はシステマティックレビューの結果から検討する必要性が示唆された,「社会的活動」,「物質使用者の物質使用行動を強化する家族の行動」,「物質使用者の向社会的な行動を強化する家族の行動」といった家族の行動に焦点をあてる。また,CRAFTには家族のコミュニケーション・スキルを改善する手続きも含まれ,かつ,CRAFTでは重要な手続きと考えられるため,家族の「コミュニケーション・スキル」にも焦点を当て検討を行う。 CRAFTを行うことによる家族の行動の変化に関する知見を収集すると共に,家族の行動の変化と物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復の関連についても検討する。また,物質使用者の行動を強化する家族の行動の変化については,機能分析の手続きの理解度も考慮しながら詳細に検討する。 さらに,家族の行動と物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復の関連を詳細に検討するため,本研究では一事例研究法を用いる。一事例研究デザインにおける標準化平均値差の算出には,最低3人以上が必要とされるため,本研究ではドロップアウトも考慮し5名を対象とする。 家族の行動と物質使用者の相談機関の利用促進,物質使用者の物質使用量の低下,および家族の精神的健康の回復の関連が明らかになることによって,家族のニーズに応じてどの行動に着目すればよいのかを検討することが出来るため,より柔軟で効果的な支援を行うことが可能となると考えられる。
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Research Products
(5 results)