2018 Fiscal Year Annual Research Report
Attosecond spectroscopy of solids with soft X-ray high harmonics
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18J11286
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 成之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | アト秒 / 高次高調波発生 / 軟X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、固体のアト秒ダイナミクスを明らかにするための超高速軟X線吸収分光の実現である。平成30年度は、そのための準備として、①軟X線高次高調波発生装置及び軟X線分光装置の開発、②開発した装置を用いた気体分子のアト秒軟X線吸収分光、③光電場波形の新規計測手法開発を行った。 まず、軟X線高次高調波発生装置及び軟X線分光装置の開発について詳細を述べる。高次高調波発生で得られる軟X線は非常に弱いため、軟X線吸収分光への応用にあたっては、その光量増大と、高効率かつ高エネルギー分解能なX線分光装置が不可欠となる。私は、高調波発生に用いるガスを高圧に充填できるガスセルの開発により高調波光量の大きな増大を実現した。また、軟X線分光装置に関しても新規設計・製作を行い、検出効率を維持しつつ高分解能なX線分光が可能となった。 次に、気体分子のアト秒軟X線吸収分光について述べる。新たに開発した軟X線発生・計測装置のデモンストレーションとして、一酸化窒素(NO)分子のアト秒時間分解軟X線吸収分光を行った。これにより、赤外パルス照射後のNO分子の電子励起・振動励起・回転励起の3つのダイナミクスを同時に追跡することに成功した。これら3つを吸収分光で同時に観測したのは世界初である。また、用いた軟X線の光子エネルギーは400 eVであり、これは高次高調波を用いた時間分解吸収分光としては世界最高レベルである。 最後に、光電場波形の新規計測手法開発について述べる。アト秒分光では、極限の時間分解能で物質内電子の光応答を追跡するが、その際、励起光の波形が電子ダイナミクスに大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、光パルスの電場波形を完全に決定する技術は極めて重要である。私は、高強度レーザーを気体中に照射したときに発生するプラズマ発光を用いて光電場波形が簡便に測定できることに着目し、実験的にそれを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、軟X線発生・分光装置開発の主成果として、光子エネルギー400 eVにおける気体分子の軟X線アト秒分光に成功した。本研究の当初の計画では、光子エネルギー284 eVの炭素K端周辺の軟X線を用いることを想定しており、400 eVでのアト秒分光の成功は期待以上の成果である。本研究の目標である固体のアト秒分光は、今回開発した実験装置において、サンプルを気体から固体に取り換えることによって実現できるため、目標達成の見通しは極めて明るいと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、前年度の進捗を踏まえ、本研究の目標である固体サンプルのアト秒時間分解吸収分光を行う。具体的には、まずチタン酸バリウムをターゲットとした分光を行う。軟X線吸収分光においてはサンプルの厚みが100 nm程度になっている必要があるが、チタン酸バリウムは100 nm程度の粒径を持つナノ粒子が市販されており、これを用いて比較的容易にサンプル作成が可能であると考えられるためである。企業と協力してサンプル作成を行い、並行して固体サンプルマウントの開発を行う。これらが終了次第、実際にチタン酸バリウムのアト秒時間分解吸収分光を行う。サンプルの励起光としては赤外レーザーパルスを用いる予定である。結果が出次第、理論の研究者と協力して第一原理計算によるシミュレーションを含めた解析を行う。得られた結果は、随時国内および国際学会において発表する。また、チタン酸バリウム以外のサンプルにも着手する。光触媒、有機太陽電池といった応用上重要な物質に取り組む予定である。 また、軟X線吸収分光と並行して、赤外レーザーパルスおよび軟X線パルスの時間波形測定手法の開発も行う。アト秒時間分解吸収分光においては、サンプルを励起するレーザーパルスと、サンプルの状態をプローブする軟X線パルスの時間波形が実験結果に大きく影響することが知られており、これらを吸収分光と同時に測定することで、実験結果の解釈がより鮮明になると期待される。具体的には、アト秒ストリーク法と呼ばれる、赤外レーザーパルスと軟X線パルスの2色光による光電子分光を用いる予定である。
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Research Products
(7 results)