2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J11380
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上村 麻梨子 北海道大学, 水産科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 魚油 / 酸化抑制 / アミノ化合物 / アクロレイン / トコフェロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、官能基に着目した他の様々なアミノ化合物を用いる(1)と同時に、アクロレインと構造が類似した飽和型アルデヒドのプロパナール(2)と、また他の異性体トコフェロール(3)を用いてより強力な新規酸化抑制方法の確立とともに科学的バックグラウンドの解明を試みた。 (1)アミノ化合物の検討:ヒドロキシ基を持つアミンと持たないアミンで抗酸化活性を比較した結果、ヒドロキシ基を持つアミンの方でαTocとの相乗効果が強く示されることが分かった。一方で抗酸化活性の強さは、ヒドロキシ基の数に比例しないことも分かった。また、アミノ基を複数個持つアミンとSPGの抗酸化活性を比較した結果、アミノ基を多く持つアミン単体で強力な抗酸化活性が示され、αTocとの組み合わせでさらに強い効果が示された。 (2)アクロレイン vs. プロパナールの検討:プロパナールにおいてもSPGとの反応性が見られたが、その反応生成物の抗酸化活性の強さはアクロレインとSPGとの反応生成物に及ばなかった。 (3)異性体トコフェロールの検討:α-Tocに加え、α-トコトリエノール(αT3)、βT3、γT3、δT3を用いた。その結果、SPG非存在下ではそれぞれ効果の強さに違いが見られなかったが、SPG存在下ではその効果の違いが顕著に表れ、γT3で最も強い効果が示された。 以上本検討より、官能基に着目したアミンを選択し、魚油で最も多く生成される臭い成分のアクロレインとの反応生成物によるγT3との相互作用といった科学的バックグラウンドの基で、新規抗酸化方法を確立できるという重要な学術的知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、様々なアミノ化合物を用いてより強力な抗酸化方法の確立を行い、反応物の構造からその酸化抑制における科学的バックグラウンドの知見を得ることができた。一方で、その反応生成物の化学構造の同定にまでは至ることができず、その構造と抗酸化活性の相関に関する知見を得ることはできなかった。そのため、翌年度の研究調書に含まれる、αToc以外の異性体トコフェロールを用いた検討に関して前倒しで本年度の検討内容に組み込んだ。その結果、アミノ化合物の検討や異性体トコフェロールにおいても抗酸化活性の効果に顕著な違いを示すという意義深い結果を得ることができた。また、本研究で着目しているアミノ化合物を用いた酸化抑制法におけるTocの役割について、魚油の初期の酸化反応をある程度制御することで反応生成物の生成に関係し、結果的に抗酸化活性に影響すると考察していた。しかし、用いた異性体Toc全てが単独ではその抗酸化活性の強さに全く違いが示されず、アミノ化合物存在下では非常に大きな違いが生じた。そのため、Tocが別の役割を持つ可能性が示された。 本年度の計画調書の通りには進まなかったものの、一部前倒しで行った結果において新たな知見を得ることができたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として行うことは、反応生成物の構造解析(1)、精製された反応生成物の抗酸化活性評価(2)と一般的な酸化評価法である過酸化物価の測定方法も含めた抗酸化試験(3)の3点である。
(1)反応生成物の精製と構造解析:これまで得られてきた強い抗酸化活性を示すアミノ化合物についてアクロレインと反応させ、必要な場合はサンプルを精製し、NMRおよびMSに供してその化学構造を決定する。 (2)反応生成物の抗酸化活性評価:精製し構造決定された反応生成物を魚油に添加し、その抗酸化活性を評価するとともに、化学構造と活性の強さの相関について考察する。 (3) 過酸化物価の測定方法も含めた抗酸化試験:これまで得られた最も強い新規抗酸化方法を確立できる、アミノ化合物およびToc等の抗酸化剤の最適な組み合わせを基に応用化を目指す。そのため、一般的に脂質酸化の品質評価に用いられる過酸化物価の測定を基にして、酸化評価を行う。 上記の検討によって、更なる科学的バックグラウンドの解明と新規抗酸化法の確立を図る。
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Research Products
(6 results)