2018 Fiscal Year Annual Research Report
脳発生のin vivo二光子ライブ解析:神経前駆細胞の脳室面離脱と力学要因の関係
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18J12757
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川添 亮太郎 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 神経解剖 / 神経系前駆細胞 / 組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
個体からの切り出しを伴わない、「本来の力学的環境が確保されるin vivoでの未分化神経系前駆細胞」のライブ観察を目指し、①二光子顕微鏡下での母体および、子宮内のマウス胎仔の生存管理、観察のための条件を明らかにした。②さらにそうして確立した新規観察系により、神経系前駆細胞をライブ観察することに成功した。③得られた成果をまとめ、第124回日本解剖学会全国学術集会において発表した。①について、母体に対するイソフルラン麻酔の至適条件を明らかにするとともに麻酔下での母体の呼吸、体温等の全身状態を管理する体制を整えた。また二光子顕微鏡観察下で胎仔を生存させるためには体温の維持が必須であることを突き止め、自作の装置により長時間にわたる胎仔の生存を可能とした。二光子顕微鏡による観察に際しては、ブレのない観察画像を得るため、柔らかい胎仔の組織を傷つけることなく、母体から伝わる振動を抑制するための固定を達成する必要があった。そこで3Dプリンター等を用いながら、目的にかなう固定装置を完成させた。②について、これまで先行研究として二光子顕微鏡により大脳原基の最表層(深さ~50μm) を観察した報告があったが、さらに深部(深さ~200μm)に位置する神経系前駆細胞のライブ観察を達成した。大脳の形成は神経系前駆細胞からニューロンが適切な時期に適切なだけ産生されることで達成される。そのため母体とのつながりを維持した、より生理的に近い条件で神経系前駆細胞のライブ観察が可能になることで大脳形成のメカニズムについてのより詳細な理解や母体に対する薬剤投与等が大脳形成に与える影響の評価、またジカウイルスなどの母子感染の病態理解といった波及効果も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、研究の第一の目的として掲げた個体からの組織の切り出しを伴わない、神経系前駆細胞の子宮内ライブ観察を二光子顕微鏡下で達成した。しかし、脳原基における人為的な細胞増殖によるヘテロトピアをもたらす「神経前駆細胞の脳室面からの離脱」を細胞挙動から理解するために必要と考えた脳室面付近の高解像度でのライブ観察は未だ達成できていないため、進捗状況を「やや遅れている」と評価した。高解像度での脳室面のライブ観察を達成できていない理由として、現在使用している二光子顕微鏡(ニコンA1RMP:名古屋大学医学部共通機器)レーザーシステムおよび蛍光検出システムが最新のものと比較すると劣り、組織深部に位置する脳室面付近の観察が困難であることが挙げられる。そこで19年度はより強力な出力の二光子励起レーザーと高感度な検出システムを有する二光子顕微鏡(ライカ SP8:基礎生物学研究所での共同利用、ABiS支援申請中)を用い、高解像度での脳室面付近のライブ観察の達成を目指す。併せて、これまで神経系前駆細胞の可視化のために用いてきた遺伝子改変マウスに用いられているものよりも、より蛍光強度の大きい蛍光タンパク質を用いた標識による改善も見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、二光子顕微鏡(ニコンA1RMP:名古屋大学医学部共通機器)による、個体からの組織の切り出しを伴わないライブ観察系を確立し、子宮内のマウス脳原基における神経前駆細胞の細胞周期依存的な核運動の観察(脳膜面から約200μmの深さ)に成功した。一方、これまでの研究で用いてきた二光子顕微鏡はレーザーシステムおよび蛍光検出システムが最新のものと比較すると劣り、脳原基深部の脳室面付近(脳膜面から約250μmの深さ)を高解像度で観察することは困難だった。そこで今年度は①より強力な出力の二光子励起レーザーと高感度な検出システムを有する二光子顕微鏡(ライカ SP8:基礎生物学研究所での共同利用、ABiS支援申請中)を用い、高解像度での脳室面付近のライブ観察を達成する。そして人為的な細胞増殖によるヘテロトピアをもたらす、神経前駆細胞の脳室面からの異常離脱がどのような細胞挙動により起こるのかをライブ観察により明らかにする。②ヘテロトピア形成時の細胞離脱に関わる分子機構解明のため、②のライブ観察と子宮内電気穿孔法による遺伝子過剰発現、CRISPER/Cas9を用いたノックアウト実験とを組み合わせた解析を行う。③②での分子機構の検討を踏まえ、それらが生理的条件で見られるニューロン分化に伴う脳室面からの離脱に関与する可能性を検討する。併せて、このニューロン分化に伴う脳室面からの離脱について力学要因の関与の有無を明らかにすることを目指し、in vivo二光子顕微鏡観察下とスライス培養下(生体内と比較し力学的負荷が緩和される)とで離脱の頻度やニューロン分化時のapical突起の離脱の様相が異なるかを検討する。④得られた成果を取りまとめ学会発表するとともに論文として学術誌に発表する。
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Research Products
(1 results)