2018 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚と触覚のマルチモーダルな意味的一致が商品の評価や購買に及ぼす影響
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18J13082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井関 紗代 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | Haptic imagery / Mental simulation / Cross-modal interaction / Psychological ownership |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に「女性的、滑らか」と知覚される香りを使用し,その香りが付着した紙に対して,そのテクスチャにおいても,「滑らか」と意味的に一致して知覚された場合,その触り心地はよりポジティブに評定されることが明らかになっている(Krishna et al., 2010)。そこで,この「香りとテクスチャの意味的な一致がもたらす効果」に着目し,(1) 香りとテクスチャの意味的な一致がもたらす効果はどこまで拡張できるのか?(2) 香りの意味的な連合は新たに学習可能か?という問いを明らかにすることを本研究の目的とする。 本研究において,空気中の香りと商品画像におけるテクスチャの意味的一致の効果を検討するためには,その商品を触るという行為の心的シミュレーションを十分に促進する必要がある。したがって,必要に応じた研究計画の修正を行い,まず,以下の二点について明らかにすることとした。 第一に,どのような商品画像が,商品を触る行為の心的シミュレーションを促進するのかという点について検討を行った。その結果,商品の画像の向きが利き手と一致しているとき,購買意図が高くなることが明らかになった。これらの研究成果について,第170回記憶・認知研究会にて報告した。また,日本心理学会第83回大会で発表予定である。 第二に,触るという行為の心的シミュレーションは,特にどういった状況で促進されるのかという点について検討を行った。その結果,コントロール欲求が高まっている状況で触るイメージをすると,触知経験が豊富な商品に限り,所有感が高まることが示された。これらの研究成果をまとめた論文が日本感性工学会論文誌に掲載された。また,新規性や実務的な示唆が認められ,書籍「感性商品研究の最前線」を分担執筆した(印刷中)。 以上のことが明らかになったため,次のステップとして,本研究に用いる香りを選定する予備調査を現在実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において,空気中の香りと商品画像におけるテクスチャの意味的一致の効果を検討するためには,その商品を触るという行為の心的シミュレーションを十分に促進することが必要不可欠である。したがって,研究計画の軌道修正を行い,まず,以下の2点について明らかにすることとした。第一に,どのような商品画像が,商品を触る行為の心的シミュレーションを促進するのかという点について検討を行った。その結果,商品の画像の向きが利き手と一致しているとき,購買意図が高くなることが明らかになり,商品画像の向きが心的シミュレーションの促進に影響を与えることが示唆された。第二に,触るイメージをするという心的シミュレーションは,特にどういった状況で促進されるのかという点について検討を行った。その結果,コントロール欲求が高まっている状況で触るイメージをすると,これまでに実際に触ったことのある商品に限り,所有感が高まることが示された。これらのことから,商品を触るという行為の心的シミュレーションの促進には,画像の向き,コントロール欲求の状態レベル,これまでの触知経験が影響を及ぼすことが明らかになった。したがって,これらの知見をふまえることで,商品を触る行為の心的シミュレーションを十分に促進することが可能となり,空気中の香りと商品画像におけるテクスチャの意味的一致の効果の検討を遂行できる状況が整ったため,次のステップとして,本研究に用いる香りを選定する予備調査を現在実施中である。これらのことから,本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である(1) 香りとテクスチャの意味的な一致がもたらす効果はどこまで拡張できるのか?(2) 香りの意味的な連合は新たに学習可能か?について検討することとする。 はじめに,予備調査を行い,30種類の香水の中から,女性的,男性的,中性的な香りを選定する。続いて,研究1では,それぞれの香りを漂わせた実験室にて,空気中の香りと商品画像におけるテクスチャの意味的一致の効果について検討する。具体的には,(香り:女性的, 男性的)×(刺激:滑らか, 粗い)の2要因参加者内計画で実験を実施し,予備調査で選定した香りが漂う実験室内において、刺激(紙)に対して、触り心地や好ましさを評定してもらい、意味的な一致の効果が生じるか検証する。それぞれの実験室に入る前には、コーヒー豆の香りを嗅ぐことで、香りの知覚のリセットを行う(Secundo & Sobel, 2006)。 研究2では,中性的な香りを用い、(性別:男, 女)×(学習:女性と関連づけ, 男性と関連づけ, 関連づけなし)×(刺激:滑らか, 粗い)の3要因混合計画で実験を行う。「新しく立ち上げるブランドの評価」というカバーストーリーで、香りが付着した冊子(ビジュアルイメージ:女性ブランド,男性ブランド,その他)を配り、評価してもらうことで、香りの意味的連合の学習を行う。その後、同様の香りが付着した刺激(紙)に対して、触り心地や好ましさを評定してもらい、意味的な一致の効果が生じるか、性差も含めて検討する。その際、付着した香りに関する女性性、男性性の知覚について測定し、意味的連合が学習可能であるか明らかにする。 研究1と研究2を論文にまとめ、Journal Of Consumer Researchに投稿する。また,Association for Consumer Researchで発表する。
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Research Products
(5 results)