2018 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的不斉炭素ー炭素結合活性化反応を利用した歪んだ縮合多環式芳香族化合物の創製
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18J13634
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高野 秀明 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素ー炭素結合活性化 / ロジウム / ビフェニレン / 位置選択性 / エナンチオ選択性 / 配向基 / 不飽和結合 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒を用いた炭素ー炭素結合活性化反応は近年盛んに研究されているが、立体的に混み合った炭素ー炭素結合を選択的に開裂し合成変換することは非常に困難であり、自在な分子変換を達成するためにも、その問題を解決することは必要不可欠である。 研究代表者はそのような分子変換を達成するため、置換ビフェニレンのより混み合った炭素ー炭素結合の切断を目的とし研究を行った。研究計画に従い、オルトフェニレン架橋によりビフェニレンとアルケンを連結した基質を合成し、種々遷移金属触媒の検討を行った。その結果、ロジウム触媒を用いた場合にビフェニレンの混み合った炭素ー炭素結合開裂を起点として反応が円滑に進行し、目的物であるジヒドロベンゾフルオランテンが得られた。様々な官能基に対する耐性を有し、14例の誘導体を合成することに成功した。さらに得られた化合物とその酸化体である芳香族化合物の基礎光学特性の測定を行い、比較を行った。加えて、実験的な反応機構解析を行うことで、この分子変換におけるアルキンの配向基かつ反応点としての役割の重要性を明らかにした。 更なる展開として、ビフェニレンとアルキンをオルトフェニレン架橋によりを連結した基質を合成し反応を行った。その結果、キラルなロジウム触媒存在下オルト位置換アリールアルキンを有する基質を反応させることで非常に高い収率、高いエナンチオ選択性で環化反応が進行した。さらに複数の反応点を有する基質を用いて反応を行ったところ、高い収率、高いエナンチオ選択的かつジアステレオ選択的に反応が進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したビフェニレンのより混み合った炭素ー炭素結合の開裂を起点とする反応開発に関して、アルケンの形式的な[4+2]付加環化反応を開発することに成功し、条件検討、基質検討、反応機構解析及び基礎物性の測定を行った。その結果を国際論文誌に投稿し、cover picture及びHot paperに選ばれた。 また研究計画以上の結果として、アルキン部位を導入した置換ビフェニレンを用いたエナンチオ選択的環化反応を達成している。この反応は非常に高い収率、高いエナンチオ選択性で進行し、広い官能基耐性を有している。さらに、反応点を複数持つ基質を用いた場合でも反応が円滑に進行し非常に高い収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性で目的物を与えた。現在、年内の論文投稿を目指して更なる基質適応範囲の拡大と反応の応用、反応機構解析等を行っている。 さらに、アルキンを有する基質を用いて他の遷移金属触媒を用いると、非常に穏やかな条件で複数の炭素ー炭素結合が一挙に開裂し、再構築できることが明らかとなった。現在、この反応に関して条件検討を行っており、論文発表へ向けて研究を続けている。 以上のことからも、当初の計画以上に研究が進展してると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在検討を行っているエナンチオ選択的環化反応に関して、引き続き基質検討、反応の応用、反応機構解析及び基礎物性解析等を行い、論文発表を目指す。 加えて新しく発見した反応に対し、温和な条件下最も効率よく複数の炭素ー炭素結合を切断し再構築するための条件を探索する。最適条件決定後、基質検を行い反応の一般性を検討する。また、NMRを用いた反応機構解析やDFT計算による遷移状態の算出などを行い、反応のメカニズムを明らかにする。最終的にはデータを全てまとめ論文発表を目指す。
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