2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J14052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 嘉浩 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ哲学 / プラグマティズム / 宗教哲学 / 消費社会 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の一年目となる本年度は、採用年までの準備を踏まえ、本格的に研究に取り組む時期であり、特に終盤は、二年目にそれらの成果を総合するための下準備として、自身の研究計画を様々な角度から振り返る時期だった。 本研究の目的は、孤立的な個人を強調する政治的態度や消費文化に対抗して、デューイ宗教思想が「自己超越」の契機を重視したことを示すことであり、デューイと影響関係のあったD. ブーアスティンやW. リップマンを中心に比較的に思想を検討することより研究を進めるものであった。 本年の成果としては、4月にデューイからの影響を受けたC. W. ミルズやR. セネットらのクラフツマンシップ研究を消費文化に対抗するものとして位置づける発表を行い(応用哲学会)、より具体的な形で消費文化について検討するために、観光について検討する発表を行った(観光学術学会)。 また、ブーアスティンとデューイを比較する論文が『人間存在論』に掲載されたほか、文化や観光に関する国際会議予稿として(International Conference on Future of the Past: Tourism and Cultural Heritage in Asia)で、ブーアスティンのプロジェクトを批判的に再構成する論文が掲載された。さらに、デューイから影響関係にある同時代人のエーリッヒ・フロムとの対比的に検討する研究発表を10月に行った(関西哲学会)。 加えて、これらの研究成果を総合する準備として、所属研究科で11月に開催された思想文化論セミナーで、これまでの研究を再構成する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関西哲学会など、定評ある哲学系の学会での研究成果発表、また、学術雑誌などでのデューイ及びその周辺の思想家たちに関する論文の発刊など、具体的な成果を上げている。 本研究は、政治・宗教・消費の三項からデューイ思想の現代的意義を明らかにするものである。研究課題を設定した時点での年次計画においては、政治(民主主義)と宗教(信念/信仰)の領域に交差する研究として、でデューイの保守主義的な哲学観を示し、哲学が文化の「目利き」の働きをすることを示した上で、その成果を、より洗練された構想(リチャード・ローティのアイロニズム)と比較することで、デューイとローティの類似と相違を体系的に検討することを目標としていた。しかし、研究を進める中で、前年度に終える予定だった政治と消費の結びつきについて、より詳細な掘り下げを行う必要を痛感した。それゆえ、消費文化に関する研究、消費と政治の交差する領域に関する研究を中心に展開することになった。また、デューイとローティの思想に関しては、国内外の研究文献に触れたことで、十分な比較検討をすることができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの成果を踏まえながら、ジョン・デューイとリチャード・ローティの思想を、アイロニズムに力点を置きながら比較・考察していく。その成果は研究科紀要などにて成果発表する予定である。 また、日本哲学会でデューイ・リップマン・ブーアスティンという三者の政治思想を比較する予定であり、特に、彼らのトマス・ジェファソンに対する態度の微妙な違いと、彼らが民主主義を論じるときの共通性とに注意しつつ、デューイ宗教思想の現代的意義を探索するつもりである。 その上で、これまで積み上げてきた多数の成果を総合し、また、デューイの主著であるExperience and Natureの形而上学を再構築して、そこに自身のこれまでの研究を位置づけながら、博士論文を執筆し、明快な形で整理していく。
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