2018 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化酵素・脱メチル化酵素の肝特異的ノックアウトマウスの表現型解析
Project/Area Number |
18J14635
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井口 恵里子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、DNMT3B-floxedマウスとALB-Creマウスの交配により肝細胞特異的DNMT3B KOマウスの作成・繁殖に成功し、real time RT-PCR 法により肝臓特異的にDNMT3Bの発現が低下していることを確認した。 肝細胞特異的DNMT3B KOマウスを経時的に解剖し肝臓の組織学的評価を行ったところ、肝組織は正常な発生及び発育を呈したが、チオアセトアミド負荷による慢性炎症刺激下においては、DNMT3B野生型のコントロールマウスと比較して強い炎症細胞浸潤を認めた。また、チオアセトアミド負荷が長期(30週)に及ぶと、コントロールマウスには見られない著明な肝線維化及び発癌が確認された。発生した腫瘍はすべて、病理学的には高分化型の肝細胞癌であり、ヒトにおいて慢性肝炎を背景として発症する腫瘍に合致する所見であった。我々はこれを、肝臓におけるDNMT3Bの役割を示唆する重要な表現型と考え、現在サンプル数を増やすために実験を継続中である。 また、こうした表現型を引き起こす機序を解明するため、肝細胞特異的DNMT3B KOマウス及びコントロールマウスの肝組織よりRNAを抽出し、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を現在行っている。発現解析はもちろんのこと、DNMT3Bによるgene bodyのメチル化が関与する可能性が報告されているalternative transcription start sitesについても近日中に解析予定である。 なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA脱メチル化酵素TETについては動物モデルの確立ができていない状況であるが、DNAメチル化酵素DNMT3Bについては肝特異的ノックアウトマウスモデルの作成に成功し、慢性炎症刺激下で線維化及び発癌が増加するという表現型が得られ、現在トランスクリプトーム解析などによりこの機序を解明に向けて研究を進めているところである。まずマウスモデルの表現型を得ることが申請時点での第1年時の目標であったため、概ね順調と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
DNMT3Bノックアウトにより生じているDNAメチル化パターンの変化を解析するため、これらのマウス組織から抽出したDNAを用いて、バイサルファイトシークエンシングなどの手法により網羅的にDNAメチル化状態を解析することを計画中である。 なお、チオアセトアミド投与下で発癌した肝細胞特異的DNMT3B KOマウスのサンプル数が十分増えた時点で、腫瘍部のトランスクリプトーム解析及びメチル化解析も行っていく。これらの実験により、DNAメチル化の異常が慢性炎症を背景とする発癌に寄与する機序を明らかとしたい。 なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。
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