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2018 Fiscal Year Annual Research Report

ケニア山における氷河縮小が山麓水環境に及ぼす影響の解明

Research Project

Project/Area Number 18J14966
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

大谷 侑也  京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2018-04-25 – 2020-03-31
Keywordsアフリカ / 熱帯高山 / ケニア山 / 同位体環境学 / 水資源 / 水環境 / 高度効果 / 涵養標高推定
Outline of Annual Research Achievements

今年度の調査ではケニア山の雨季の標高2,000mー4,500mにおける降水,河川水,氷河融解水,積雪を採水した.採水容器は容量100mLのプラスチック製ボトルを用い,採水後は空気が入らないように密閉した.サンプルは日本に持ち帰り,総合地球環境学研究所の同位体分析装置を用いて測定した.
その結果,採水した降水サンプルの酸素同位体比から,乾季とは異なる明瞭な高度効果が確認された.そこから高度効果直線を算出した.この高度効果直線の算出により,雨季における山麓域の河川水の涵養標高を推定することができ、また高度効果直線に河川水の値を代入すると、その涵養標高を求めることができる.結果、乾季の河川水の涵養標高は4,650mであるのに対し、雨季は3,224mであった.降水の同位体値は雨量と負の相関を持つ。この量的効果により季節間の違いが現れたと考えられる。今後はこの結果を、考慮しつつ山麓の河川水の季節的な変化を調査・分析する予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

東アフリカのケニア山で行われた研究は世界的に見ても乏しく、特に現在、私が取り組んでいる氷河と山麓水資源の関係性を解明するような研究はほぼ見当たらない。そのような状況の中で私は、地球温暖化の影響で消滅しつつあるケニア山の氷河由来の水資源が、山麓地域住民にどれほど貢献しているのかを主題とし研究を遂行している。今年度は、まず研究調査許可証の取得を行った。世界遺産であるケニア山国立公園は、通常外国人による調査許可証の取得は比較的難しいとされるなかで、彼はKWS(Kenya Wildlife Services)のオフィスに幾度となく通い、Dr. Charles Musyoki (Director General)と十分な議論を行った結果、許可証を取得することができた。またこれまでの研究で、乾季における山麓河川水の涵養標高の推定結果(4,650m)は既に得られているが、雨季においては分析されていなかった。そのため今回は現地の雨季において、山頂付近、中腹、山麓域にて調査を行い氷河融解水、河川水、降水のサンプリングを行った。それらの水サンプルを総合地球環境学研究所において同位体分析を行った結果、雨季における山麓域(約2,000m)の河川水の涵養標高は約3,200mであるという結果が得られている。このケニア山の山麓河川水の涵養標高の雨季と乾季の違いを解明できたことは、地域の集水域として重要なケニア山の水資源管理に対し、少なからず貢献できると評価している。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究により、ケニア山の氷河の縮小は急速に進んでおり、また山麓の河川水や湧水といった水資源に山頂付近の氷河や積雪融解水が大きく貢献していることがわかった。一方で現地調査を進めるなかで、ケニア山からの水資源が山麓住民の生活を支えていることは明らかであった。そこから予想されるのは、今後、氷河縮小とともに湧水・河川水が減少すると、農業や地域住民の生活用水に悪影響が及ぼされるということである。しかし、その実態は未だ明らかにされていない。今後の研究の目的はこれまで明らかにされてこなかった、温暖化によるケニア山の氷河縮小が、水環境の変化をとおして山麓の地域社会に与える影響を解明することである。
これまでの研究調査から、ケニア山の降水量の年推移はほぼ横ばいであるが、河川水量は減少していることがわかった。年降水量に変化が見られないのに対し、河川水量が減っているということは、河川水の水源に何らかの変化が起きているということである。ケニア山の場合、その水源の変化は山頂付近の氷河の縮小である可能性が高く、将来的に氷河が消滅すれば更に山麓の河川水量の減少が加速することが考えられる。
すでに現地では、水資源の減少によって地域住民の生活に影響が出ている。農家に対するインタビューでは、河川水の減少に伴って、かん漑できる水量も減り、その結果、栽培できる作物種が乾燥に強いもの(ジャガイモ、コムギ等)に限られてきているという声も聞かれている。また家庭では、蛇口をひねって水が出る時間に制限がかかるようになっている。実際にそのような水資源の減少による問題が起きているにもかかわらず、それに対する定量的な研究調査は未だ行われていない。氷河が消滅すれば氷河-水環境-住民生活の関係をリアルタイムで記録することができなくなるため、早く調査を開始しなければならない。

  • Research Products

    (3 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] ケニア山における氷河縮小と水環境の変化が地域住民に与える影響2018

    • Author(s)
      大谷侑也
    • Journal Title

      地理学評論

      Volume: 91 Pages: 211-228

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ケニア山における氷河縮小と水環境の変化2018

    • Author(s)
      大谷侑也
    • Organizer
      日本山の科学会2018年度秋季学術大会
  • [Presentation] アフリカ熱帯高山における近年の氷河・水環境の変化2018

    • Author(s)
      大谷侑也
    • Organizer
      日本アフリカ学会第55回学術大会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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