2018 Fiscal Year Annual Research Report
A geographical study on the social vulnerability to environmental hazard
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18J15324
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内山 琴絵 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 災害に対する脆弱性 / 復旧・復興 / 曝露性 / レジリエンス / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、災害に対する脆弱性を被災地において分析し、災害発生直後から復興過程までにみられる問題とその形成過程を明らかにすることである。理論的研究で災害に対する脆弱性を捉える枠組みを提示し、2つの実証的研究の結果を位置付ける。実証的分析(1)では、発災直後から復興期に至るまでの脆弱性の構成要素を明らかにする。対象地域における被災状況と復興過程を現地調査から整理し、多様な時間・空間スケールで生産される脆弱性を捉える。実証的分析(2)では、発災直後から復興期に至る脆弱性を指標化し、地図化する。復興事業がかえってコミュニティレベルの災害に対する脆弱性を増大させる可能性があるのではないかという仮説の下、個人や集団の人口構造、建造環境、制度、市場といった要素から要因を考察し、災害発生から復興までにおける災害に対する脆弱性の理論化を目指す。 このうち平成30年度は、理論的研究と、実証的分析(1)を行った。理論的研究では、これまでの国内外の災害研究のレビューを行い、論点を整理したうえで「日本における災害に対する脆弱性を捉える分析枠組み」を提示した。これは、これまで議論が深められてこなかった、災害発生からある程度長い時間が経過した被災地における災害に対する脆弱性を捉えることの重要性を特に主張するものである。先行研究において、脆弱性の議論は被災前の問題、レジリエンスの議論は被災後の問題が中心となってきた。そのため、災害、復興、現在に至るそれ自体の過程が、地域やコミュニティの災害に対する脆弱性をいかに形成するのかという視点がこれまで欠けていた。したがって、災害発生前から発災後の復興プロセスを含めた長期的な時間軸を射程に入れた枠組みを考察した。 また、実証的分析(1)では、土砂災害被災地域を対象として、上記の分析枠組みに基づき、防災集団移転実施集落と未実施の集落を比較し、脆弱性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究実施計画では、異なる被災地域間の復興過程における相違を、現地調査によって詳細に把握することを予定していた。具体的には、2011年東日本大震災で被災した宮城県沿岸地域、および昭和47年7月豪雨で被災した豊田市小原地区において、行政担当者およびコミュニティ・リーダー、住民へのインタビュー調査を行った。宮城県沿岸地域においては、復興土地区画整理事業の進展について把握した。豊田市小原地区においては、集団防災移転促進事業の実施コミュニティにおける合意形成プロセスを把握した。 こうした研究内容について、国内外の学会において発表し、議論を行うことができた。以上の進捗状況から、現在までの研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に引き続き、平成31年度も日本のいくつかの被災地域において現地調査を実施する。当初、発災直後から復興期に至るまで、いかに災害に対する脆弱性は増大していくのかについて分析を試みていた。しかし、現地調査を進める中で、被災前の地域社会の状況についても詳細に検討していく必要性を認識した。そのため、平成31年度も継続して現地調査を行い、コミュニティレベルの特徴的な事例地域を選定し、(1)被災前、(2)被災直後、(3)被災から長期間経過した後という時間スケールで被災地域の脆弱性の変容について明らかにする。その後、調査結果をもとに災害に対する脆弱性を指標化し、災害発生前後の災害に対する脆弱性の高い地域の分布を地図化する。 以上の内容についてまとめた論文を執筆する。また、国内の学会において研究内容を発表し、議論を行う。
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