2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20157
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甘中 一輝 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 双曲型ラプラス作用素 / 離散スペクトラム / 重複度 |
Outline of Annual Research Achievements |
擬リーマン多様体はラプラス作用素と呼ばれる2階の特別な微分作用素を有する。コンパクトリーマン多様体の場合には、ラプラス作用素のスペクトル的性質として、例えば固有空間の次元が有限であることが知られている。これは楕円型微分作用素の一般論である。非リーマン多様体の場合にはラプラス作用素は楕円型ではなく、その大域解に関する一般論は未開拓である。実際、コンパクトであっても固有空間の次元は有限にも無限にもなり得る。 さて、局所半単純対称空間は擬リーマン多様体の重要なクラスを占める。小林俊行は1980年代後半から非リーマンでもよい局所半単純対称空間上の大域解析の研究を創始した。2016年にはFanny Kasselとの共著論文で局所半単純対称空間の離散スペクトラムの概念を提唱し、ある条件下で無限個の安定離散スペクトラムを発見した。 このような背景で、本年度は離散スペクトラムの重複度についての研究を志した。その際、低次元のもっとも簡単な3次元の局所反ド・ジッター空間の場合を調べ上げることをひとまずの目標として設定した。この設定では離散スペクトラムとはラプラス作用素の二乗可積分な固有値全体からなる集合と一致する。当該年度では、2次実特殊線型群SL(2)の二乗可積分表現の行列係数の族に対して、そのPoincare級数の一次独立性を考察した。その結果コンパクトな反ド・ジッター多様体の安定固有値に対して、固有値を大きくすればするほどその重複度は無限に大きくなることを証明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的とは異なってしまったが、本年度は反ド・ジッター多様体の双曲型ラプラス作用素の重複度の研究に一歩踏み出すことが出来、今後の研究の指針も定まった。以上が本研究員が進捗状況の区分として上述のものを選択した理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
反ド・ジッター多様体の双曲型ラプラス作用素の二乗可積分な固有空間についての研究を続ける。特に一般化Poincare級数が為す空間について考察する。この為にコンパクト反ド・ジッター多様体の例、例えばGueritaud-Kasselによる構成を参考にして、個別にその一般化Poincare級数のなす空間を考察する。
|