2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20388
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Research Institution | Kobe University |
Research Fellow |
船本 大智 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 花粉媒介者 / ガ媒花 / 送粉シンドローム / 鱗翅目 / 種間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物における夜行性ガ類への花形質の適応様式を明らかにするために、国内外のさまざまな植物種において花と訪花性ガ類の相互作用を調査した。 キブシ(キブシ科)の花を観察したところ、昼間には主に小型ハナバチ類やハナアブ類が訪花し、夜間にヤガ類とシャクガ類が訪花することが確認された。キキョウ科ツリガネニンジン属に関する研究では、ヒナシャジンにおける研究成果が国際学術雑誌に掲載された。この研究では、ヒナシャジンがガ媒花であることが示唆された。ヒナシャジンは夜咲き・夜間に偏った蜜分泌といった、夜行性ガ類による花粉媒介に適応的だと考えられる形質を示した。ヒナシャジンに訪花したヤガ類には、ヒナシャジンの花粉が多量に付着していたことから、ヤガ類はヒナシャジンの有効な花粉媒介者だと考えられる。加えて、ヤガ類において体表上のヒナシャジン花粉の付着部位を調べたところ、花粉はガ類の胸部と腹部の腹面に特異的に付着していることが明らかになった。このような、花粉が花粉媒介者の腹面に特異的に付着する花粉媒介様式は、ハナバチ媒花ではよく知られているが、ガ媒花では、ほとんど報告されていない。また、東アジアにおける花粉媒介者―植物相互作用に関する文献を調査し、総説論文を国際学術雑誌に投稿した。 上記の国内の種を対象とする研究に加え、南アフリカ共和国においてもガ媒花の調査を行った。複数の科にわたる植物種(ジンチョウゲ科、ラン科、ヒヤシンス科、ヒガンバナ科など)において、夜行性ガ類による訪花が観察され、花粉媒介者であることが示唆された。特筆すべき成果として、ヒガンバナ科の一種が下向きの花をもち、ヤガ類とトモエガ類の訪花を受けることが分かった。類似の花形態とガ類の訪花が日本でも見られることから、下向きの花をもつガ媒花が世界のさまざまな地域に存在することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本と南アフリカ共和国において野外調査をした。その結果、南アフリカ共和国と日本において、下向きの花をもつ植物種において、ガ類の訪花を確認することができた。この発見は、下向きの花をもつガ媒花が世界の異なる地域において収斂進化したことが示唆する。 野外調査に加え、研究成果を論文としてまとめることができた。ヒナシャジン(キキョウ科ツリガネニンジン属)における夜行性ガ類の花粉媒介における重要性に関する研究結果を論文としてまとめ、植物学の国際誌に原著論文を出版することができた。また、東アジアの花粉媒介者に関する総説論文を国際誌に投稿した。 上記のように、本研究の現在までの進行状況はおおむね順調に発展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
夜行性ガ類に対する花形質の適応様式を明らかにするための調査を行う。特に、ツリガネニンジン属の花粉媒介者と花形質の調査を進める。調査によって得られた成果を論文として報告する。
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Research Products
(3 results)