2018 Fiscal Year Annual Research Report
管内伝播マイクロ波の最適化によるクラックレーダーの実現
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18J20649
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
片桐 拓也 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / 金属配管 / マイクロ波 / 飛行時間 / モード変換 / 信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、原子力発電所等の大規模な配管群に対するマイクロ波クラックレーダー技術において肝要である配管へのマイクロ波の入射手法について検討した。 配管端部から信号を入射しTEモードのマイクロ波を伝播させる入射技術について、先行研究にて開発された側面入射用プローブ(信号入射部)の一方の端部を短絡した場合の端部入射用プローブとしての適用可能性を3次元有限要素法による数値解析および真鍮直管内のスリット(模擬き裂)検出実験により検証した。数値解析によりプローブから配管へのTE01モードの透過特性を評価した結果、プローブの短絡距離d(プローブの同軸ケーブル挿入箇所と短絡板間の距離)によって透過強度の周波数特性が異なることが明らかとなった。続いて数値解析結果を基に制作したプローブおよび内径19 mmの真鍮直管を用いて管内に存在する管軸方向スリットの反射波検出実験を実施した結果、dが小さいほどより明瞭なスリットからの反射信号が得られるような傾向があり、また反射信号の強度がdに依存することが確認された。 また配管側面から信号を入射しTEモードを配管内に伝播させる手法について、飛行時間の評価だけではなく信号の伝播方向をも区別可能なプローブの開発を行った。ケーブルをプローブ側面から傾斜角を設けて挿入し、配管両端でそれぞれ異なる透過特性が得られるかどうか、先の検討と同様に数値解析および反射波検出実験により検証した。数値解析の結果、TEモードの透過エネルギーの周波数特性が配管の左端と右端で有意に異なることが確認され、また反射波検出実験においても管軸方向スリットが配管右側または左側に存在する場合について反射波の強度の有意な差異が確認された。したがって、従来の配管側面からのTEモード入射手法では困難であった、き裂の位置が信号入射位置より上流側か下流側かが判別可能となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてはマイクロ波を用いて配管内の割れを含む微細きずをも一括探傷可能なクラックレーダーの実現を目的とし、現在までに当該技術において本質的であるマイクロ波の入射手法の開発及び信号処理手法の開発の2点を実施してきている。 本年度までの検討項目は主として金属配管内にTEモードのマイクロ波を効率的に入射する技術を開発することである。結果として、従来配管側面からの入射に限られていたTEモード伝播技術を配管端部からの入射技術に応用し、数値解析および実験により当該技術の適用性が示された。さらには側面入射用のプローブを改良し、配管に対する信号の入射角度を調節することで従来困難であった信号の伝播方向の判別を可能とするプローブを開発し、同様に数値解析および実験により検証した。したがって、金属配管に対するTEモードの入射技術に関しては基礎的な検証を終えたといえる。一方で、配管側面からのTEモードの入射技術については配管の両端を一括で探傷する手法、配管端部からのTEモードの入射技術については大口径配管への適用性評価、さらにこれらの検討に共通して長尺配管を用いた信号の減衰の評価、信号のノイズの軽減、配管内を伝播する複数モードの取扱方など、今年度において解決されなかった課題が残されている。しかしながら、これらは現在までに得られた知見を利用することである程度の解決の見通しが立っており、次年度にて検討予定である。以上より、当該研究における本年度までの成果はおおよそ期待通り得られたものであると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、各種信号入射技術については更なる詳細な検討を行い手法の確立を目指し、また信号処理に関しては配管内におけるマイクロ波のモード変換、高次反射や複数モードを考慮した検討を行う。 配管側面からのTEモード入射手法については前年度得られた知見をもとにプローブ(マイクロ波入射部)の開発を行う。具体的には、同軸ケーブルを配管側面から傾斜をつけて挿入した状態で信号を入射する場合マイクロ波の透過エネルギーが一方に偏ることが示されたことから、マイクロ波入射部に異なる複数の発振ポートを設ける等のパラメータを設けることで配管のそれぞれの端部にマイクロ波を伝播させ、さらに伝播方向を区別可能とするプローブを開発する。この検討は有限要素法を用いた数値解析によりプローブを通じて配管内にマイクロ波を入射した場合に形成される電磁場分布(モード)の評価、金属配管および製作したプローブを用いた反射波の評価を通じた数値解析結果との整合性の評価を主な実施事項とする。 信号処理手法の検討について、従来の手法においては配管内を単一のモードのみが伝播し、かつ単一の反射源のみが存在することを考慮したものであったことから、本年度は配管内でのモード変換や高次反射を考慮した手法、さらには配管内に複数のモードが存在する場合においても信号の検出を可能とする手法の開発を行う。具体的には、マイクロ波のモードによって分散の度合いが異なることを利用し、各モードの信号を個別に抽出するようなコードを作成し、先述の入射手法の検討において得られた測定信号を用いてその有効性を検証する。
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Research Products
(4 results)