2018 Fiscal Year Annual Research Report
戯作の出版・流通・受容の研究―貸本問屋大島屋伝右衛門の営業に注目して―
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18J20862
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松永 瑠成 中央大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 戯作 / 書籍流通 / 貸本屋 / 蔵書印 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は国立国会図書館・国文学研究資料館・国立歴史民俗博物館・酒田市立光丘文庫・東京大学国語研究室・京都大学附属図書館等で文献調査を行うとともに、以前から作成を進めていた書肆大島屋伝右衛門が携わった出版物の一覧を「大島屋伝右衛門出版書目年表稿」(『書物・出版と社会変容』21号、「書物・出版と社会変容」研究会、2018年10月)として公刊した。これは現段階で確認できている出版物をまとめた謂わば経過報告であるが、今後調査・研究を進めていく上で必要な基礎的データでもある。加えて、この一覧により、従来詳らかでなかった大島屋の営業期間が、文化12年から大正9年にかけてのおよそ100年間であったことを明らかにできた。 また、日本学術振興会特別研究員の採用準備期間に日本近世文学会で行った口頭発表を加筆・修正し、「「中本」受容と大島屋伝右衛門―版元、そして貸本問屋として―」(『近世文藝』109号、日本近世文学会、2019年1月)を公刊した。本稿では種々の資料や出版物のみならず、書籍に押捺された貸本屋の蔵書印等から、版元・貸本問屋としての大島屋の実態とその意義、想定される書籍流通を明らかにした。具体的にはまず、大島屋の3代にわたる系譜をまとめ、次に滑稽本や人情本をはじめとする中本との密な繋がりを出版物から指摘した。そして最後に大島屋が江戸の書肆丁子屋平兵衛や上方の河内屋茂兵衛らの助力を得ながら、中本を近代初頭に至るまで世に送り出していたことを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画をおおむね達成することができたのみならず、次年度へ向けた準備にも着手できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
大島屋伝右衛門を中心としながらも、ほかの同業者や隣接する業界をも視野に入れた調査収集をあわせて進めることで、戯作における出版・流通・受容の実態をより具体化していきたいと考えている。また、昨年度の進捗状況を踏まえ、今後は大島屋に加えてほかの貸本問屋にも目を向けていく。これにより、大島屋の営業を客観化するとともに、貸本問屋という機構を取り巻く書籍流通の様相をも明らかにしていきたい。
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Research Products
(2 results)