2019 Fiscal Year Annual Research Report
戯作の出版・流通・受容の研究―貸本問屋大島屋伝右衛門の営業に注目して―
Project/Area Number |
18J20862
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松永 瑠成 中央大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 戯作 / 貸本屋 / 貸本文化 / 書籍流通 / 蔵書印 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新たに聚栄堂大川屋錠吉(後の大川屋書店)の調査に着手するとともに、大島屋伝右衛門を取り巻く人物らに着目した研究を進めた。まず、第12回十九世紀文学研究会において、「初代大川屋錠吉の黎明―明治二〇年代までを中心に―」と題する口頭発表を行った。発表では、明治以降に目覚ましい躍進を遂げる大川屋の初代が、浅草の書肆高梨弥三郎と瀬山直次郎、そして3代目大島屋伝右衛門と結託するなかで、版元としての基盤を築き上げたこと、また後に大川屋が貸本問屋として営業を展開していく背景には、多分に大島屋の影響があったことなどを指摘した。次に「大島屋伝右衛門と池田屋一統―売薬「処女香」を端緒として―」(『出版研究』50号、日本出版学会、2020年3月)を公刊した。本稿では、売薬「処女香」の広告や引札をもとに、大島屋と池田屋清吉・池田屋利三郎・池田屋幸吉ら池田屋一統との繋がりを指摘するとともに、その繋がりをもととして展開された書籍流通について論じた。 また、石川県立図書館所蔵辻家貸本文庫の調査に基づいた「近代金沢における書籍受容と春田書店」(『中央大学国文』63号、中央大学国文学会、2020年3月)を公刊した。本稿では、辻家貸本文庫が大正ごろに金沢市尾張町で営業していた貸本屋(春田書店)の旧蔵書であることを明らかにした上で、同地における書籍受容の様相を書籍それ自体に残されたあらゆる痕跡から考察した。春田書店は大川屋が発行した書籍も蔵書していたことから、今後はそれらの書籍がどのように流通したのかも明らかにしたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画をおおむね達成することができたのみならず、次年度へ向けた準備にも着手できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
大島屋と大川屋の調査を継続するとともに、新たに丁子屋平兵衛を対象とした調査にも着手していきたい。これまでの調査・研究で明らかになっているように、丁子屋は大島屋を中心とした書籍流通を考える上で欠かすことのできない存在である。そのため、今後は丁子屋の動向を追うなかで、大島屋の実態をより具体的に浮かび上がらせたいと考えている。
|
Research Products
(3 results)