2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Theoretical Basis of Interpretation in International Criminal Law and Its Relationship with State Consent
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18J20949
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
マンスフィールド デビッド宥雅 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 国際犯罪 / 国際刑事裁判所 / 法解釈 / 国家意思 / 罪刑法定主義 / 賠償 / 被害者 / 国際刑事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は国家意思の取り扱いに着目し,国際刑事法における法解釈が,一般国際法と異なっている点を明らかにするものである。法の適用は必然的に当該法の解釈を伴う。本研究は,これまでのところ統一的な理論が存在しないままになされていた国際刑事法における解釈を説明しうる,実証的かつ規範的に裏付けがなされた理論の提示を試みるものであり,国際刑事法学にとって大きな意義を持つと考えられる。この研究目的を達するために,(1)国際刑事裁判機関の判例の検討を通して判例上の解釈手法の特質を明らかにし,(2)条約法及び国際刑事法両分野に関する学説を再整理したうえで判例の立場との位置関係を確認する。そのうえで,(3)解釈手法の独自性を支える処罰権の規範的根拠といった刑事法の概念により説明し(4)最後に,提示した国際刑事法における解釈手法論について,国際法の他の分野との比較をし,分野横断的な検討を行う。 本年は,国際刑事裁判所(ICC)における賠償命令に関する規定(規程第75条)を中心に研究を行った。とりわけ,被害者への補償は本来刑事法の任務ではないと捉えられているところ,ICCにおける賠償命令の制度が,何故国際社会により希求され,あるいは如何に解釈されているかの検討を行った。 賠償命令については,これが民事賠償であるのか,あるいはあくまで刑事制裁の一環として課されるのかという対立軸に基づき,判例や学説を可能な限り網羅的に検討した。これらを整理した結果,学説の大部分が,賠償に関する規定をICCが民事賠償を扱うことを意味するものとして捉えている一方で,同命令は実際には刑事制裁の一つに過ぎず,当初は民事賠償に近い立場をとっていた判例も,徐々に刑事制裁に近い立場に立脚していることが明らかになった。またこの過程で,国際刑事裁判における罪刑法定主義の原則,及び解釈に関する規定第21条3項についても,若干の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は賠償という各論的な分野に関する研究が主となったが,一定の進展が見られ,研究成果を公表することができた。一方で,より総論的な側面に関する研究を行うことが,翌年度以降の課題として挙げられよう。
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Strategy for Future Research Activity |
前項であげた課題を踏まえ,総論的な枠組みの研究を更に進めていきたい。また,その過程においては,論文や学会報告の形で適宜研究成果を公表していきたい。
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