2018 Fiscal Year Annual Research Report
専攻分野の価値意識形成メカニズム、賃金格差生成メカニズムの解明
Project/Area Number |
18J20998
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 健太郎 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 専攻分野 / 意識 / 賃金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、高学歴社会となった今日の日本社会において、専攻分野がどのように価値意識を形成するのか、そして、専攻分野間での賃金格差はどのようなメカニズムによって生成するのかを明らかにすることを目的としている。 専攻分野の価値意識形成メカニズムの解明に関して、初年度は文献調査の結果をふまえ、パネルデータ分析ではなく、クロスセクショナルデータによる検討を行った。インターネット調査データや個別面接訪問調査データの分析の結果、新自由主義、宗教心、政治的関心、原子力発電への賛否などの価値意識と専攻分野との間で関連が確認された。 専攻間賃金格差生成メカニズムについて、初年度はPIAACデータ(国際成人力調査)による分析を行った。PIAACデータの分析の結果、コミュニケーションやサービスといった専攻分野での賃金が、他の専攻分野に比べ低くなる傾向にあること、そして、そうした賃金格差がシグナリング理論と人的資本論のそれぞれにおいて指摘されてきた媒介的な経路によって生成されていることが確認された。 以上の専攻間賃金格差生成経路のうち、シグナリング理論に関しては、専攻分野に対する社会的評価の差異が存在することを前提としていることから、理論的説明の補完を目的としたインターネット調査も実施した。インターネット調査は独自に実施するのではなく、大規模なサンプル設計のインターネット調査を実施するプロジェクトにおいて項目提案を行うことで、より望ましい調査データを取得し、初年度は当該データのクリーニング等を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
専攻分野の価値意識形成メカニズムについて、当初予定していたパネルデータ分析による検討は行わなかったものの、クロスセクショナルデータによる分析を進めることができた。専攻間賃金格差の生成メカニズムの解明に関しては、PIAACデータの分析を進め、インターネット調査も実施することができた。以上をふまえ、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
専攻分野の価値意識形成メカニズムについては、昨年度実施したクロスセクショナルデータの分析から得られた知見を踏まえ、それら知見について統計的因果推論が可能なデータを取得・分析し、専攻分野が特定の価値意識と関連するメカニズムについて検討する。うち、当初予定していたパネルデータ分析に関しては、先行する調査データに分析上の関心がある項目が入っている必要があるといった制約や時間的問題等を踏まえ、適宜、経済学や政治学における実験デザインなどの因果推論の手法を参考にしながら、専攻分野が特定の価値意識と関連するメカニズムについて検討していく。 専攻間賃金格差の生成メカニズムに関しては、昨年度実施のPIAACデータの分析結果についてのピア・レビューを受けるため、学会報告やジャーナルへの投稿を積極的に行っていく。 また、PIAACデータの分析を補完する位置づけとなる、専攻分野に対する社会的評価の差異を明らかにすることを目的としたインターネット調査データについては、今年度分析を実施する。インターネット調査自体は昨年度実施し、データが取得できており、そのクリーニングも完了している。今年度は、まず、単純集計表等を含んだ基礎分析の知見をまとめた報告書を作成し、基本的なデータ特性について確認する。次に、多変量解析により、専攻分野の社会的評価が異なるのかを検証し、専攻分野に対する社会的評価と専攻間賃金格差とが、どのような関係にあるのかを整理し、現代日本社会における専攻間賃金格差の生成メカニズムについての包括的な考察を進める。
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Research Products
(1 results)