2018 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞の協調した三次元形態形成における細胞間接着装置の役割
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18J22029
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西村 亮祐 徳島大学, 大学院医科学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 上皮細胞 / 上皮形態形成 / 細胞間接着 / メカノバイオロジー / 微細加工技術 / 細胞骨格 / 三次元培養 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞間接着装置の張力感受性が上皮組織の形態形成にもたらす意義を明らかにすることを目的とする。本年度は、細胞間接着装置の一つアドヘレンスジャンクション(AJ)を構成する張力刺激伝達分子αカテニンの張力感受性の異常が上皮形態形成に及ぼす影響を中心的な課題として取り組んだ。 AJの張力感受性は、αカテニンの張力に応じた構造変化(ビンキュリン結合部位の露出)によってもたらされる。既往の研究で張力感受性が異常な点突然変異体が得られていたため、それを利用して細胞塊形成実験を行った。非接着性のシリコーン基質でできたV字状の細長い溝に細胞を播種し、細胞集団が自発的に球形へと変化する過程を経時的に観察・測定した。その結果、張力が掛かっていないときにも張力が掛かっているのと同じ挙動を示す(ビンキュリンと強く結合する)変異体αカテニンの発現細胞では集団の形状がいびつになった。しかし張力に対して応答できない(常にビンキュリンと結合できない)変異体では、形態に対する影響は認められなかった。野生型を発現する細胞をミオシンII阻害剤ブレビスタチンで処理し、細胞間の張力発生を抑制した場合でも正常に形状変化が進んだことから、この過程は張力に依存しないことが明らかとなった。張力が必要でない局面においてはαカテニンがビンキュリンを解離させることが重要であることが明らかとなったが、その一分子の性質がいかにして細胞集団全体の形状に影響を及ぼすかについてはさらなる検証が必要である。また、張力依存性の意義を知るためにはある程度強い張力を細胞が発生させている状況下で実験を行う必要がある。今後は張力に依存した形態形成のモデル系を別途構築し、従来の系で得られているデータと比較・検討しながら研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三次元培養モデルの構築と細胞塊の形状変化の定量的解析手法の確立は順調に進み、一定の知見を得ることができた。しかしすでに構築したモデルは強い張力を要せずに形態形成が進むことがわかり、本モデル単独では当初の研究目的を果たすことが困難であることが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的である、細胞間接着装置の張力感受性が上皮形態形成に及ぼす影響の解明のため、強い張力に依存して進行する形態形成のモデル系を新たに立ち上げる。具体的には細胞に対して自然に働く重力を外力として用い、重力によって細胞塊が押しつぶされそうになるのに対抗しながら立体的な形状を作り上げていくような形態形成モデルを構想しており、基礎検討を進めている。
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