2019 Fiscal Year Annual Research Report
キノン補酵素形成機構の解明およびペプチド修飾酵素による機能性環状ペプチドの創出
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18J22104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大関 俊範 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 翻訳後修飾 / モノオキシゲナーゼ / セリンプロテアーゼ / X線結晶構造解析 / 環状ペプチド / ラジカルSAM酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素の活性中心を形成するサブユニットQhpCには、キノン補酵素システイントリプトフィルキノン(CTQ)を含む2種類のユニークな翻訳後修飾構造が存在し、3つの修飾酵素が関与する多段階ステップによって生合成される。これまでの解析の結果、まず、細胞質内でラジカルSAM酵素QhpDがAsp/Glu残基とCys残基との間に3ヶ所の分子内チオエーテル架橋を形成し、次にFAD依存性水酸化酵素QhpGが前駆体Trp残基のインドール環を水酸化することを明らかにした。 これまでにQhpGの結晶構造を1.8Åの分解能で決定することに成功していた。そこで、既存条件での結晶に基質ペプチドのソーキングを試みた。X線回折像を取得し解析した結果、基質が結合すると考えられているポケットに明確な電子密度は確認できなかった。おそらく、ペプチドが小さすぎるか架橋構造がないためにアフィニティが低く、結合できなかったと考えられる。また、QhpGのFADがどのようにして還元させるかを、さまざまな還元剤を用いて実験を行った。しかし、用いたNAD, NADPH, FADH2, α-リポ酸いずれにおいても還元されなかった。 これまでに基質フリーのQhpEの結晶化にも成功していた。最適な結晶条件を探し、その結晶を用いてSpring-8、BL-44XUにてX線回折像を取得し解析した。その結果、分子置換にて位相決定し、構造決定することに成功した。アミノ酸残基の配列相同性からも予想されるように、Asp11、His47、およびSer180がcatalytic triadであり、水素結合ネットワークが形成されていることがわかった。また、Daliサーバーを用いてQhpEの構造比較を行ったところ、Tk-subtilisinと高い相同性を示した。活性中心付近には基質QhpCが結合すると思われるポケットが存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
QHNDHの活性中心を形成するQhpCの翻訳後修飾には、3つの修飾酵素が関与する多段階ステップによって生合成される。これまでに、翻訳されたQhpCは、QhpDおよびQhpGと三者複合体を形成し、QhpDによって3ヶ所のチオエーテル架橋が形成される。その後、同一複合体上で、QhpGによってCTQ前駆体Trp残基側鎖インドール環が二重水酸化されることを明らかにしてきた。また、水酸化反応に続くと考えられるQhpEのリーダーペプチド切断活性を調べた。その結果、未架橋より架橋形成したQhpCの方が反応性が高いことを明らかにした。本年度は、これまでに結晶化に成功していたQhpEのX線構造解析を行い、2.0Åの分解能で構造決定することができた。これは、基質QhpCとの相互作用するアミノ酸残基を特定する足掛かりになるだろう。また、詳細な反応メカニズムを理解するうえで非常に重要なデータを得ることができた。また、これまでの先行研究で、チオエーテル架橋形成酵素QhpDを用いて、短縮型QhpC(sQhpC)において様々な配列を持つsQhpCの架橋形成に成功している、今回、QhpEを用いて、sQhpCのN末端リーダーペプチドを切断することに成功した。今後は、さまざまな架橋ループ配列からなるsQhpCのリーダーペプチドを切断し、架橋部位のみを単離する方法を確立したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、QHNDHのチオエーテル架橋形成に関与するQhpD、およびCTQ形成に関与するQhpGなど、QhpCの翻訳後修飾に関与する酵素の反応メカニズムを詳細に理解した上で、そのユニークな修飾酵素を用いた機能性ペプチドの創出が実現できれば、新たな医薬品を創り出すツールにもなり得る。本研究の成果を新規性の高い医薬品や抗菌剤の開発につなげることが最終目標である。本年度は、QhpE/QhpC複合体モデルを構築し、詳細な基質認識機構を調べる。また、QhpDを用いて機能性環状ペプチドの創出を試みる。方法としては、様々な架橋ループ配列を持つQhpCを架橋化し、QhpEを用いて架橋部位のみを単離する。方法については、HPLCを用いることで単離可能であると考える。その架橋ペプチドを用いて生理活性を調べたい。
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Research Products
(4 results)