2018 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル束の特異エルミート計量と相対随伴束の順像層の正値性の研究
Project/Area Number |
18J22119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲山 貴大 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 特異エルミート計量 / 多重劣調和関数 / ベクトル束 / 曲率カレント / 最小特異計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はベクトル束の特異エルミート計量の性質を解明すること、及びそれを応用して相対随伴束の順像層の正値性を調べることである。これらに関連して、報告者は以下の結果を得た。 (1)ベクトル束の特異エルミート計量の曲率カレントに関する研究:ベクトル束の特異エルミート計量に付随する曲率カレントは、一般には測度係数として適切に定義できないことが知られている。Griffiths半負な特異エルミート計量について、その計量が非退化な集合上では曲率カレントが適切に定義できるという定理がある。報告者は計量が退化している集合上で曲率カレントが適切に定義されるための、ある十分条件を見つけた。また、行列式の計量が最小特異計量となるような特異エルミート計量というものを導入し、ある良い条件の下ではこの計量に付随する曲率カレントが適切に定義できることを示した。 (2)ヘルマンダーのL2評価式の逆とベクトル束の新たな正値性について:近年、多重劣調和性を新たに特徴づける研究が行われている。具体的には、領域上の上半連続関数が大沢竹腰の拡張定理の条件のようなものを満たすとき、その関数が多重劣調和関数であることが示された。報告者はこの結果を応用することで、ヘルマンダーのL2評価式の条件を満たす上半連続関数の多重劣調和性について研究した。具体的には、まず捻りを加えたヘルマンダー条件というものを導入し、領域上のある程度特異性の小さい上半連続関数がこの条件を満たすならば、この関数が多重劣調和関数になることを示した。また、上記2つの条件のベクトル束版について考察し、それがベクトル束に正値性を与えることを見た上で、Griffiths正値性や中野正値性といった古典的な正値性との関連について調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記(1)の研究によって、曲率カレントが適切に定義できる計量のクラスが拡張された。また(2)の研究によって、曲率カレントを直接用いないで定義できる正値性の概念が導入された。これらは、特異エルミート計量の正値性の研究における大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新たに導入したヘルマンダーの条件から得られる正値性と、中野正値性についての関係を研究する。 (2)Narasimhan-Simha計量の正値性について研究する。 (3)上記(2)と関連して、領域上のp-Bergman核やLp版の大沢竹腰の拡張定理について研究する。
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