2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本のための憲法解釈方法論の体系的・横断的検討:日本・英米圏・フランスを中心に
Project/Area Number |
18J22376
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 亮 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ロナルド・ドゥオーキン / 法哲学 / 解釈方法論 / 憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①研究課題に取り組む前提となる修士論文の成果のブラッシュアップ及び②解釈方法論のサーベイを行った。 まず、①について。修士論文においては、ロナルド・ドゥオーキンの解釈方法論について研究したが、当初の見込み以上に実質的な解釈方法論を提唱していることが分かった。この成果を踏まえて、ドゥオーキンの論証を認識論上の概念(IBE)を用いて再構成する作業を行うことにより、ドゥオーキンの議論がそれに特有の文脈から離れて、より一般的に妥当する議論として理解し得ることが明らかになった。さらに、ドゥオーキンの議論には、メタ倫理学上、静寂主義(quietism)であるという批判がなされていることを踏まえて、そのような批判がなぜどのようにドゥオーキンへの批判たりうるか、その批判は妥当なのかを検証した。これにより、ドゥオーキンの議論が、T.M.スキャンロンやトマス・ネーゲルといった他の論者の議論と比べても精緻かつ体系的なものであるということが明らかになった。 次に②について。今年度は、原意主義をはじめとした英米の解釈方法論についてサーベイを行った。結果として、法学における解釈方法論は、ドゥオーキンのものと比べて哲学的色彩が薄く、むしろ判例をはじめとした実定法の解釈及びその適用や、その国の歴史的条件によって制約された議論の趨勢と強く結びついていることが明らかになった。そのため、他国の法学レベルの解釈方法論をそのまま日本に応用するには、むしろそれらの議論内在的にではなく、外在的に哲学的検討を行うべきことが多々あることも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記①の成果により、哲学的なレベルではドゥオーキンの解釈方法論を前提とすることが妥当だと現時点では考えられる。、また②で述べたように、実定法学における解釈方法論はその国の実定法学と強く結びついていることが明らかになった。そのため、当初予定していたように、英米仏の解釈方法論の広範なサーベイを行う必要性は相対的に薄くなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ドゥオーキンの解釈方法論を前提としながら、解釈論上の具体的な問題を議論することによって、日本で採用されるべき解釈方法論を検討していく。
|