2019 Fiscal Year Annual Research Report
Src活性制御の破綻による染色体不安定性を介した細胞のがん化・悪性化機構の解明
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18J22507
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
池内 正剛 京都薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | v-Src / LATS2 / ブレブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん遺伝子v-SrcがLATS2に与える影響とv-Src発現下のLATS2の役割を解明することを目指す。令和元年度は、①v-SrcによるLATS2のキナーゼ活性低下機構、②LATS2のキナーゼ活性非依存的な細胞膜突出(ブレブ)抑制、③ v-Srcにより増加するLATS2の生理的意義について調べた。 ①v-SrcによるLATS2のキナーゼ活性低下機構:LATS2のThr1041が、MSTによりリン酸化されるとLATS2は活性型へと変化する。v-Src発現下のLATS2の活性状態をThr1041のリン酸化レベルを指標にして調べた結果、LATS2 Thr1041のリン酸化レベルがv-Src発現により低下した。 ②LATS2のキナーゼ活性非依存的なブレブ抑制:v-Src発現細胞で増加するLATS2をノックダウンするとブレブ形成が増加したことから、LATS2が細胞膜の剛性維持に寄与することが示唆された。このブレブ形成が、野生型LATS2だけでなくキナーゼ活性欠失変異体の再発現により抑制され、LATS2はキナーゼ活性非依存的に細胞膜の剛性を維持することが明らかになった。 ③v-Srcにより増加するLATS2の生理的意義:ブレブ形成が細胞の遊走・浸潤に関与することが報告されており、本研究で観察されるブレブがこれらに寄与するか調べた。創傷治癒アッセイや、ボイデンチャンバーとマトリゲルを組み合わせたアッセイを行い、ブレブ形成が細胞の遊走・浸潤に与える影響を探索したが結論には至らなかった。現在は、足場非依存的増殖に対するブレブの寄与に着目しており、予備的検討実験ではその関与を示す結果を得ている。 以上より、令和元年度では、v-Src発現下でLATS2のキナーゼ活性が低下する要因と、LATS2がキナーゼ活性非依存的に細胞膜の剛性を維持する働きを持つことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り令和元年度は、①LATS2のキナーゼ活性がv-Srcにより低下する要因に加えて、②LATS2にはキナーゼ活性非依存的に細胞膜の剛性を維持する働きがあることを明らかにした。一方、③本研究で観察されたブレブ形成が細胞の遊走・浸潤に関与すると予想し、さまざまな実験手法で解析したが結論には至っていない。しかし、足場非依存的増殖とブレブ形成の関係に着目した結果、予備的検討実験で関与を示す結果を得ている。 計画していた実験に加えて、v-SrcによりYAPの標的遺伝子であるCTGFやCyr61のタンパク質レベルの発現量が増加することを明らかにし、v-SrcによるYAPの転写活性の亢進が示唆された。 これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、次の項目の内容について取り組む。 ①v-SrcによりLATS2の発現量が増加する機構:v-Src発現下でCTGF、Cyr61の発現量が増加したことやv-Src発現細胞でYAPが核に局在したことから、v-SrcによるYAPの転写活性の亢進が示唆された。YAPの標的遺伝子にLATS1/2が存在することから、v-Src発現下におけるYAPの転写活性に着目する。リアルタイムPCR法を利用して、v-SrcによりLATS1/2のmRNA量が増加するか調べる。また、発現量が増加した場合はYAPの転写活性の亢進を介しているかYAPノックダウンの影響を調べる。 ②細胞膜の強度とブレブの関係:Ezrin、Radixin、MoesinからなるERMタンパク質は、アクチン細胞骨格と細胞質膜をクロスリンスするタンパク質であり細胞膜の安定化に寄与する。その中でもEzrinは、ブレブが退縮するときに働くことが報告されている。そこでv-Src発現細胞のEzrinをノックダウンし、本研究で観察されているブレブと同様の表現型が起こるか観察し、細胞膜強度の低下がブレブに与える影響を調べる。 ③LATS2による細胞膜の剛性維持とv-Srcによるがん化の関連:LATS2の細胞膜剛性維持とv-Srcによるがん化の関係を足場非依存的増殖で評価する。LATS2を恒常的にノックダウンしたNIH3T3/v-Src細胞を軟寒天培地中に播種し、v-Srcを長期間(1~2週間)発現させ、形成したコロニーの数や大きさを調べる。さらに、活性型cofilinによるF-アクチンの脱重合やEzrinのノックダウンによるアクチン細胞骨格と細胞質膜の結合低下を利用して、細胞皮質強度の低下に伴うブレブ形成を誘発し、そのブレブが足場非依存的増殖に与える影響を探索する。
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Research Products
(13 results)