2018 Fiscal Year Annual Research Report
Japan's Early Childhood Education and Care for Immigrant Children
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18J22831
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
長江 侑紀 東京大学, 東京大学大学院教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 保育 / 移民二世 / 子ども / 社会化 / 社会統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に、「多文化共生」に係る保育実践について分析したこれまでの研究の成果を関係領域の諸学会で発表した(国際学会2回、国内学会2回、紀要論文1本)。現在は、口頭発表でのフィードバックをもとに投稿論文を執筆中である。これまでの研究を整理することで、本研究を精緻化する作業が今年度の中心的な研究内容である。以下は、口頭発表の経験を振り返りながら、今後の研究作業の指針となる学びを記述する。 まず、日本社会の「外国人の子ども」についての研究において保育領域はいわば「未開拓の地」であるがゆえに、研究の位置付けや参照とする理論的枠組みや方法論の模索が喫緊の課題としてあった。そこで、移民の受け入れの多い国、例えばアメリカやヨーロッパ諸国における就学前教育・保育における排除と包摂の議論を参照しようと試みた。キーワードは、「保育の質」と「インクルーシブ」である。全ての子どもに質の高い保育を提供するといった規範的な動機が保育領域における研究の動向として窺えた。国家の財源に大きな部分を頼る福祉としての保育はナショナリズムと密接な関係にあり、さらに焦点を絞ると、初期の社会化の装置である就学前機関(幼稚園も含む)は社会統合の重要な段階にあると捉えられるにも関わらず、「外国人の子ども」への関心が比較的低く、これまで明らかにされてきた研究知見が少ない。社会的包摂および統合の視点において、保育領域においてもさらなる考察が必要であることが確認できた。国内の学会で得た重要な要点は、保護者の存在が前景する環境設定の特徴を捉えることと、教育との相違・共通点を保育の視点から説明できることである。移民の子どもと家庭を捉える研究として、社会学の観点から実践を読み解くことの重要性を認識すると同時に、社会化と社会統合の理論的枠組みの理解を深めることが必要であることを各学会発表で感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、従来から行なっている保育における多文化共生のテーマの研究を継続している。そのため本年度は、継続的な保育園のフィールドワークとともに、これまでの研究成果の発表、それを踏まえた今後の研究の精緻化が主な研究活動となった。保育において移民の子どもを対象とする研究は、日本の社会的文脈を丁寧に捉えた上で考察をするものが少なく、さらに、社会学の観点からの知見が必要とされるにも関わらず蓄積は少ない。今日、少子高齢化、労働人口減少等を理由に入管法の改正等がなされ、今後、移民社会化の一層の進展が予想される日本では、本研究がテーマとする移民家庭の子育てと移民二世の社会統合は大きな課題として浮かび上がってくるだろう。前述したように、知見が少ないことから、依拠する理論的枠組みの探索や構築、そして調査フィールドからの実践知の発見等で時間はかかるが、考察を深めるための基盤をかためることができた年度であったと評価できる。よっておおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として主に二つの取り組む課題が存在する。一つは、実証研究として知見を蓄積するために、フィールドワークの継続と対象の拡大である。もう一方は、データ分析から構築される問いとそれを支える理論的枠組みの理解を深めることである。具体的には、移民の参加を契機としてマジョリティ、マイノリティの変容と社会的関係(境界線)のあり方--多様性の受容と社会統合の様相--に焦点を絞り、調査を進める。
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Research Products
(7 results)