2018 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫受容体NLRPのインフラマソーム活性化機構の構造科学的解明
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18J22916
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 果林 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 自然免疫受容体 / NLRP3 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. NLRP3の新たな発現コンストラクト作製 NLRP3単量体のX線構造解析に向けて、新たな発現コンストラクトを作製した。 SER変異は,表面に位置する比較的大きな側鎖を持つ残基をアラニンに変異させることで表面エントロピーを減少させ,結晶化の確率を向上させることを目的とした変異である。hNLRP3のホモロジーモデルを作製し,表面に位置すると予測された嵩高いアミノ酸のSER変異体を作製した。hNLRP3のNACHTドメイン(220-536)とLRRドメイン(742-1036) のホモロジーモデルを作製し、作製したhNLRP3ホモロジーモデルからタンパク質表面に位置すると推定され,かつ嵩高いアミノ酸を含む部位を24ヶ所(NODにおいて11ヶ所,LRRにおいて13ヶ所)選択し,その部位の配列が2 ~5残基の連続したアラニンになるような変異を導入する変異体を計72種類作製した。それぞれ培養,精製を行い,約30種類を結晶化スクリーニングまで進めた。その結果、複数条件で結晶を得ることができた。
2. クライオプロテクタントの検討 X線回折強度測定時に,クライオプロテクタントとしてglycerolまたはethylene glycolを用いていたが,他のクライオプロテクタントを用いることで回折能が改善することを期待して,再現性の高い八面体状結晶についてクライオプロテクタントの検討を行った。Cryo Pro (Hamilton)を用いて,クライオプロテクタントの種類,濃度,結晶の浸漬時間等を変化させた約200条件でX線回折強度測定を行ったところ,複数の条件において,クライオプロテクタントとしてglycerolまたはethylene glycolを用いた場合よりも回折点が鮮明になり,分解能が~7オングストローム程度に向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLRP3の構造解明に向けて、SER変異体を作製し、複数条件で結晶を得ることができた。 また、現在得られている結晶について分解能を向上させることができた。 これらのことより、当研究がおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトNLRP3について、異なる結晶化条件、測定条件においてさらに分解能を向上させられる可能性があるため、検討していく。異なる動物種由来のNLRP3についても、同様のアプローチで、良い結晶化条件を探す。
また、現在着目しているタンパク質として、自然免疫応答に関わることが知られているCochlinがある。Cochlinは長鎖糖鎖のグリコサミノグリカン(GAG)と結合することがわかっているが、詳細な機能は不明である。一方、NLRP3もGAGの一種であるヒアルロン酸と結合することが知られている。予備的な実験により、CochlinはNLRP3より比較的溶液中での安定性が高いことが分かり、結晶化溶液が調製しやすいと予想される。NLRPおよびCochlinとGAGとの相互作用様式を解明し比較することで、自然免疫における炎症応答の制御機構の新たな視点からの考察につながると考えられる。そこで、これまでの計画と並行して、Cochlinの結晶化及びX線構造解析も目指す。
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