2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J23015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 康雄 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 通信 / 確率共鳴 / 雑音 / 復調方式 / 低分解能回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,雑音を利用することで性能が向上する現象(確率共鳴)を通信分野へと応用し,省電力・高感度な通信システムを構築することを目指す.これまでの研究では,分解能がわずか1bitしかない簡易な回路を用いた受信機において,本来復調できない多値振幅変調信号を,雑音を利用することで復調する手法を提案した. 本年度は,提案手法の適用範囲の拡大を目的として,最初により情報伝送効率の高い変調信号に対しての適用を検討した.具体的には振幅と位相の両方を用いて情報を伝送する直角位相振幅変調(QAM)信号や,より複雑に振幅が変動する直交周波数分割多重(OFDM)信号に対して,理論解析によって復調手法を検討し,計算機シミュレーションによって提案手法が有効であることを確認した.この検討によって,提案手法が適用可能なアプリケーションが拡大したと考えられる. また,上記の検討によって,復調する信号の振幅の変動が複雑であるほど,多くの復調に用いるサンプル点及び,データ信号に対して広帯域な雑音が要求されることを明らかにした.しかし,通常の通信方式では,通信路雑音が送信信号と同程度の帯域でフィルタリングされるため,要求を満たすことは難しい.そこで,次の段階として要求される要素を確保しやすい通信方式として,直接拡散符号分割多元接続(DS-CDMA)方式に着目し,提案手法と組み合わせることについて検討した.本検討では,提案手法をDS-CDMA方式に適用することによって,分解能が1bitの簡易な回路を用いた受信機を用いて,本来復調できない信号強度の異なる複数ユーザの信号の復調が可能になることを,理論解析及び計算機シミュレーションによって明らかにした.また,雑音帯域・サンプル点数において過剰なパラメータを用いることなく,雑音を利用することによる改善効果が得られることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前期は,当初の予定通り,振幅が複雑に変動する高度な変調方式に対して提案手法の適用を検討し,十分な知見を得ることが出来た.本年度後期に検討したDS-CDMA方式は拡散率に応じて複数点のサンプリングが必要であることから提案手法との親和性が高い.また,DS-CDMA方式では,スペクトル拡散によってデータ信号を広帯域に変換して送信するため,通信路中で加わる雑音も広帯域になる.受信機側では逆拡散によってデータ信号のみ狭帯域に変換されるため,結果として提案手法に必要な,データ信号に対して広帯域な雑音を無理なく確保可能である.雑音を利用した信号復調手法との親和性が高く,実用化を想定する上で有力な応用先である.本検討は未だ初期段階ではあるが,これまで行ってきた検討との組み合わせや適用環境の拡大によって,高い発展性が期待できる.以上のように,雑音を利用した現象の通信分野への応用に対して具体性が向上したため,概ね順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討結果を基に,DS-CDMA方式における雑音を利用した信号復調の応用について検討していく予定である.現在は受信信号及び雑音が定常であると仮定しているが,実際には通信路の変動によってそれらは動的に変化する.そこで,通信路の変動による影響や,その影響を考慮した復調手法について検討し,雑音を利用した通信システムが適用可能な領域・環境について明らかにしていく.
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Research Products
(6 results)