2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J23095
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
児玉 紗希江 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 行動シンドローム / 反応基準解析 / 個性 / クローン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではクローンのフナ類を用いて、行動シンドローム (行動形質間の相関) への捕食者環境の影響・遺伝的基盤・表現型可塑性・一貫性(個性)を明らかにした上で、その適応機序について考察することを目的としている。初年度は捕食者環境の行動への影響を調べる実験を行った。 まず、複数のクローン個体群を実験魚として産出した。十和田湖、江合川、諏訪湖、涸沼、宍道湖、八郎湖から採捕した野生の無性型メスのフナを有性型オスのフナとペアにし、それぞれ産卵させ、6つの一腹子のクローン個体群を作出した。つぎに、捕食者であるナマズとフナを水槽内で同所的飼育する処理、フナのみ飼育する処理を三ヶ月間行った(捕食者の在処理/不在処理)。水槽内には、ナマズ1個体のスペースとフナの6系統(個体)を個別に飼うスペースを作った。ナマズとフナの間は透明な仕切りで互いの姿が見え、フナの間は不透明な仕切りで互いに見えない。合計24水槽の繰り返しを行った。3ヶ月後に、行動シンドロームおよび形態形質に関する実験を行い、捕食者の在処理/不在処理の間で違いがあるかを調べた:(1) 一般的活動性:慣れた水槽での活動性、(2) 餌への反応時間:慣れた餌への食いつきの速さ、(3) 探索行動:新奇な環境での探索行動、(4) 体高:体の縦の高さである体高は捕食に対する防御形質。さらに、捕食者を取り除き1ヶ月経った後、行動形質の一貫性を調べるための同様の行動シンドローム実験を再び行なった。今年度行った一連の実験については本研究の中心となる部分を占めており、次年度以降分析を行い捕食者影響について明らかにする。この結果は、これまで知られていなかった行動シンドロームの形成要因について重要な実証例となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属していた研究所の閉庁が3月末に決まったために、実験設備が重要となる2年次に予定していた実験計画を前倒しに行った。今回の実験が本研究の核となるものであり、予定していた実験は完了したため、全体としては概ね計画通りに行っている。ドイツ滞在への準備も進んでおり、2年次の半ばには渡航できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られた行動実験データについて線形混合効果モデルを用いて分析し、反応基準解析を行い、ここまでの成果を学術論文にして投稿する。 さらに1年次に計画していた捕食者密度を調べる環境DNA分析調査、また野生フナの行動シンドロームを調べる実験については分析の後、ドイツに渡航するまでの間に時間的に余裕があれば行う。 9月にドイツへ渡航し、Niels Dingemanse教授の下で行動シンドロームの形成要因の数理モデルを構築・解析を行う。
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