2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J23095
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
児玉 紗希江 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 行動シンドローム / 行動反応基準解析 / クローン実験魚 / 個性 |
Outline of Annual Research Achievements |
捕食者の在/不在処理の間で行動シンドローム (行動形質間の相関) に違いがあるのか、またそれらの行動に一貫性はあるのかを比較するため、環境を厳密にコ ントロールしたフナのクローン個体群を用いて、その行動形質 (一般的活動性、餌への反応時間、探索行動) および形態形質 (体高) を調べた。 これらのデータ分析、研究を進めていくにあたり、ドイツに渡航し、ミュンヘン大学の行動生態学グループに参加した。動物行動生態・個性学の専門家の指導の下、一貫性とばらつきを調べる統計的手法について学びつつ、セミナー発表やミーティングを通して分析を進めた。 まず、MANOVAで分析したところ、行動や体型の形質群は系統と捕食者処理で有意に説明された。さらに、Mixed-effects modelsを用いて分析したところ、系統と捕食者処理が形質に影響を与えるかは各形質で様々であったが、系統の効果が有意になる形質が多く(探索行動、餌への反応時間、体高)、捕食者効果は一般的活動性のみで有意であった。このことから、行動や体型の形質群に対して、捕食者処理 (環境) よりも系統 (遺伝) の効果がより大きく、一貫した個体の行動形質の基盤 (個性) を形成する上でより大きな要因であることを示唆している。また、形質間の相関行列を調べると、いくつかの行動形質間で弱い負の相関が見られたこと、測定時期の異なる同一形質間に正の相関があることがわかった。すなわち、どちらの捕食者処理でも行動シンドロームが見られ、また、行動の一貫性が見られることを示唆している。クローン実験個体群を用いてのこれらの発見は、近年、動物行動学分野で発展しつつある行動の変異と一貫性を理解する基礎的な土台となり、また他の動物行動研究へ応用する上でも遺伝と環境要因の影響を考慮することの重要性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受入れ研究者のスケジュール調整、また準備に時間がかかったものの、当初予定していた通り渡独でき、共同研究者と分析・議論を行い、研究成果をまとめる目処がある程度たった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在コロナの世界的流行により予定外の日本での長期滞在を余儀なくされているが、再びドイツに渡航し、動物個性学のグループと共にこれまでの研究成果をまとめる予定である。 今後は時期、系統、捕食者を考慮した上で行動形質間の相関の分析方法を模索し、検証を行う。 また研究成果について議論を深めた上で、学会発表および論文投稿に向け、早い段階で準備を行う。
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