2020 Fiscal Year Research-status Report
動物の身体をめぐる3つの位相からみる生物とモノの連続性
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18K01189
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 未花子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60507151)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動物 / アート / 狩猟実践 / あいだ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、covid-19の影響で海外、国内での調査が十分にできなかったことから昨年度より開始した狩猟実践と共同研究の立ち上げという2本の柱によって研究を進めることとした。 狩猟実践については本年度は一人で山へ入り狩猟するという実践を通じ、これまでにフィールドで学んだ知識や技術を、実際の自然や動物との交渉の中で参照することを通じて、新たな理解や発見をすることができた。特にスピノザの影響を受けつつドゥルーズが語ったように、動物種ごとに「情動の束」が異なることが経験として理解できた。こうした点は人間という動物種が動物と関わる時に、動物の中の種、種の中の個体、というような脱領土化された存在として動物と対峙し、その動物との間に生成変化するものがあることを確認できたということでもある。 またこうした研究の成果を踏まえつつ、より広い視野から動物の身体が人間にもたらすものを議論するために、国立民族学博物館において今年度より「描かれた動物の人類学ー動物×ヒトの生成変化に着目して」という題目で共同研究を開始し、代表者を務めた。ここでは、毛皮などの動物の遺骸や動物を描いたアートを対象とすることで、狩猟の経験のように共有することが困難なものと比較して動物からの情動が形を持ちイメージとして共有しやすいことから、様々な点から議論することが可能になる。初年度である今年は、研究枠組みとしてドゥルーズ&ガタリやインゴルドなどを取り上げ、動物がひとと自然の「あいだ」をつなぐものとして重要な役割を持つこと、動物との間に様々な情動が生じ、その結果でもあるアートはイメージを共有しやすいことから、議論の対象としてふさわしいという点を確認した。 また、カナダ先住民に関する文献の整理や、書籍やシンポジウムでの成果の還元もおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はカナダにおける調査を中心として実施する予定だったが、世界的なCovidー19の流行により海外への渡航が不可能だったこと、また国内のフィールドである西表島への調査も倫理上控えることが妥当と判断されたため、計画していたフィールド調査が実施できなかったため、この点で大きな遅れが生じた。ただし、国内での狩猟実践を通じ、動物と関わる中で、新たな知見が得られたこと、本研究のこれまでの成果から派生する形で新たな共同研究を立ち上げるなど、当初の予定よりやや遅れてはいるものの、いくつかの成果は出すことができた。総合すると当初の研究計画からは大きな遅れが生じたものの、新たな手法の実践や共同研究の立ち上げにより、計画にはない部分で研究を進めることができたことから、進捗がやや遅れて入るものの今後十分に挽回できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Covidー19の状況により左右されるため現時点で推進方策はあくまでも仮定であるが、2021年度も海外調査はかなり厳しい状況であると予測できることから、国内での狩猟・動物の身体を用いたモノ作りの実践、研究会や学会における発表と議論および資料や文献の検討に時間を使うとともに、今の時点で出せる成果を着実に出すことを目指す。ただし状況が変われば、できる限りフィールド調査を実施する。
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Causes of Carryover |
旅費として計上していた分はCovid-19の流行により海外渡航と国内出張ができなくなったたため今年度は使用せず、来年度以降状況が改善され、海外への渡航が可能になった際に予定より長く滞在するなどして調査予定分の遅れを取り戻すために繰り越した。
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Research Products
(5 results)