2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01656
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
森谷 文利 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (10509607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小嶋 健太 関西大学, 経済学部, 助教 (00634247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人事の経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は理論と実証の両面から,(1)裁判官の実際のキャリアパスの特徴,(2)裁判官のキャリアパスの決定要因を明らかにすること,(3) 裁判官は憲法上要請された役割をどの程度遂行できているかをあきらかにすることである.2018年度は,この目的を達成するために,(a) 分析データの入力・整備,(b)記述統計での一次分析を行った. 「(a)分析データの入力・整備」では,1958~1971年入所の裁判官のデータ入力をした.特に,1959~1968年のデータを先行して入力・整備し,STATA用のデータセットを作成した.それ以外の期間についてもデータ入力は終わっており,整合性のチェックが残っている.また,既存研究が公表している同様のデータセットを入力し,我々のデータとの整合性についてチェックした.「恐るべき裁判」に記載されている裁判官名簿についても入力している. 「(b)記述統計での一次分析」では,先行して整備した10年間のデータについて,入職・離職の傾向,各ポストの性質,各人の出世パターン等を,記述統計を用いて把握することにつとめた.特に,BGH(1994)に基づきRankの推定・Kojima and Takii (2019)に基づたJob valueの推計を行っている.こうした量的データに基づく推計結果を,インタビュー結果と照合し,一定の整合性があることを確認した.但し,地方裁判所支部・高裁支部などの一部のポストについては問題が残っているため,改善が必要である.なお,この結果は「裁判所ポストの定量的評価: ランクとジョブバリューの観点から」Kobe City University of Foreign Studies Working Paper Series, No.58,pp. 1-31にまとめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は理論と実証の両面から,(1)裁判官の実際のキャリアパスの特徴,(2)裁判官のキャリアパスの決定要因を明らかにすること,(3) 裁判官は憲法上要請された役割をどの程度遂行できているかをあきらかにすることである.2018年度の目標は,(a) 分析データの入力・整備,(b)記述統計での一次分析であったが,こうした目標を十分達成できたと考えている. (a)については,【研究実績の概要】に記載している通り,1958~1971年入所の裁判官のデータ入力が終了している.1959~1968年のデータを先行して入力・整備し,STATA用のデータセットを作成した.既存研究のデータセットを別に入力するとともに,二つのデータの整合性についてチェックした.「恐るべき裁判」に記載されている裁判官名簿についても入力している. (b)についても,BGH(1994)に基づきRankの推定・Kojima and Takii (2019)に基づたJob valueの推計を行うとともに,入職・離職の傾向,各ポストの性質,各人の出世パターン等を,記述統計を用いて把握した.結果は,「裁判所ポストの定量的評価: ランクとジョブバリューの観点から」Kobe City University of Foreign Studies Working Paper Series, No.58,pp. 1-31にまとめている. また,こうした結果は,Economics Workshop(9月,3月)やContract Theory Workshop (8月,2月)で報告し,分析内容の改善に努めている. 以上のことから,研究期間の1年目に目標とした作業は終了しており,研究計画のとおり順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の課題は,裁判所の選別プロセスを理論的・実証的解明するすることである. 具体的には,理論面では,キャリアパスを説明するモデルの一つであるGibbons and Waldman (1999)を用いて,選別の指標となる「fast track」と「job assignment」(job valueを含む)を理論的に位置づけることを目標とする.人的資本のタスク特殊性を基本概念として,勤続年数とポストの対応関係,勤続年数と「fast track」のパターン,勤続年数と「Job assignment」などの点について,理論的なインプリケーションを得ることがモデルの拡張の目的である. 実証面では,「fast track」と「job assignment」(job valueを含む)をデータを用いて確認することである.「fast track」「隠微なfast track」については上原(2007)やAriga et al.(1999)といった先行研究の手法に基づいて検討を行う.Job valueについては,Kojima and Takii (2019)に基づく.理論研究と同様の側面(勤続年数と「fast track」のパターン,勤続年数と「Job assignment」など)について,実証面から裏付けることが目的である. こうした,理論・実証面で選別プロセス(出世コース)を解明することで,キャリアの時期ごとに,(理論・実証に裏付けられた指標に基づいて)裁判官を出世グループと非出世グループに分割することが可能になる.こうした分割によって,(1)裁判官の実際のキャリアパスの特徴,(2)裁判官のキャリアが独立性とどのように関係しているか,を明らかにできると考えている.
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Causes of Carryover |
昨年度の残高は,86,721円である.この残金は,2018年度の次年度使用額の発生原因は,1948~1958年,1969~1971年の入力データの整合性チェックの費用として予定したものであるが,2019年度に後ろ倒しし,委託し実施する予定である.なお,残りの期間を先行して分析しており,研究の全体的な進捗には問題がない.
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Research Products
(5 results)