2019 Fiscal Year Research-status Report
プリオン蛋白質のアミノ末端側領域がプリオン病の固有な性質保持にかかわるか
Project/Area Number |
18K06010
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松浦 裕一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (60398089)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
病原体“プリオン”には異常プリオン蛋白質(PrPSc)の構造の違いに基づいて生物学的性状の異なる株が存在する。牛海綿状脳症(BSE)には、従来型BSE(C-BSE)プリオンに加え2種類の非定型BSE(L-BSEとH-BSE)のプリオン株が存在し、蛋白質分解酵素消化後に残存するCore領域と呼ばれるPrPSc断片の大きさにより識別可能である。しかしながら、BSEプリオン株の感染性や病態を規定するアミノ酸配列領域は未同定である。本研究では、正常プリオン蛋白質(PrPC)のアミノ末端側非構造領域がPrPScへの構造変換とBSEプリオン株の生物学的性状保持に与える影響を調べることを目的とする。平成30年度にはアミノ末端側非構造領域欠損ウシPrPCを発現するdelBoPrPマウスへの、C-BSE、L-BSE、H-BSEの感染実験を実施して、delBoPrPマウスでは完全長ウシPrPCを発現するBoPrPマウスと比較して、H-BSEの脳内投与後発症するまでの潜伏期間が延長することを示した。平成31年度は、L-BSEの脳内投与後にdelBoPrPマウスがBoPrPマウスと比べて、より長い潜伏期間であることを確認した。また、C-BSEの脳内投与後にdelBoPrPマウスがBSEを発病しないことも示された。これらのdelBoPrPマウスを用いたBSE感染実験で、アミノ末端側非構造領域の有無がBSEの発病に関わることが考えられ、特に、アミノ末端側非構造領域がC-BSEプリオンの複製に重要な領域であることが推察された。加えて、平成31年度にはそれぞれのマウスの脳内で複製したプリオンがH-BSEやL-BSE、C-BSEの生物学的性状を保持するかを確認するための感染実験を実施した。現在マウスの経過観察中であり、感染実験終了時にはアミノ末端側非構造領域がBSEの感染や病態に与える影響が明らかになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、アミノ末端側非構造領域の有無がプリオン感染性に与える影響をプリオン株ごとに明らかにした。さらに、アミノ末端側非構造領域欠損ウシPrP発現マウスで複製したプリオンの生物学的性状を解析するための感染実験を開始できた。一方、プリオン蛋白質のPrPCからPrPScへの変換をin vitroで解析するprotein misfolding cyclic amplification (PMCA)法については、プリオンの株間でPrPScの増幅を安定させることができなかったが、プリオン株間でPrPScの増幅を安定させる同一の条件が設計されつつある。そのため、令和2年度にはアミノ末端側非構造領域の影響についてin vitroでの解析が可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の予定に従って、アミノ末端側非構造領域の欠損がプリオン株の生物学的性状に与える影響を明らかにする。また、アミノ末端側非構造領域欠損PrPCのPMCA法でPrPScの増幅条件を設定して、PrPCからPrPScへの構造変換におけるアミノ末端側非構造領域欠損の影響を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
マウスの飼育管理に必要な物品を当初計画より安価に購入できたために未使用額が発生した。しかし、アミノ末端側非構造領域のin vitro解析によるPMCA法の条件を設計するための経費が嵩み、令和2年度も継続してPMCA法で実施することから、未使用額をその経費に充てることとしたい。
|