2018 Fiscal Year Research-status Report
明治・大正期のオペラ受容における日本語創作音楽劇の位置づけに関する研究
Project/Area Number |
18K12224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 由紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20794176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語創作音楽劇 / 坪内逍遙 / 宝塚少女歌劇 / 日本オペラ史 / レビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は明治30年台後半から大正期にかけて、西洋のオペラの刺激を受けて書かれたさまざまな日本語創作音楽劇を対象とし、台本と同時代批評の分析を通じて、これらの作品群を、日本のオペラ受容史の中に新たに位置づけることを目指している。 研究の初年度である平成30年度には、まずは分析の対象になりうる一次資料の網羅的収集を開始した。坪内逍遙らによる「新楽劇」関係では、基本文献の入手をおおむね完了した。帝国劇場の女優劇に関する資料収集は、資料の大部分を所蔵する早稲田大学演劇博物館の長期休館に伴い中断せざるをえなくなったが、次年度以降に着手予定であった初期宝塚少女歌劇関連資料の入手を先に進めている。これらの資料収集は次年度以降も継続する予定である。また同時に、研究資料のデジタル化および分類整理するための環境を整えた。 坪内逍遙作品については、全容の把握と並行して、特に『堕天女』(大正4年)台本のテクスト分析を行った。同作品と、これに山田耕筰が付曲した楽劇『堕ちたる天女』(昭和4年初演)については、早稲田大学オペラ/音楽劇研究所を拠点に、国内外の研究者と情報交換を続けている。 宝塚少女歌劇関連では、これまであまり知られていなかった楽譜資料を入手したのを契機に周辺情報を調査したところ、岸田辰彌『モン・パリ』(昭和2年初演)に端を発する同歌劇団の「レビュー」の台本形式の成立に関して新たな知見を得た。現在、雑誌投稿論文を執筆中である。なお、一連の調査の発端となった資料は、一般向けトークコンサートの準備中に入手したものである。 このほか、本研究着手以前の研究成果に基づくものではあるが、1件の口頭発表を行った。また、博士論文(平成29年度学位取得)に基づく単行本も上梓した。いずれの機会にも、さまざまな分野の研究者から、今後の研究に活かしうるフィードバックを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集については、「研究実績の概要」に書いた事情により、一部、次年度以降と順序を入れ替えて取り組むことになったものの、総量としては順調に進んでいる。 入手した資料の検討・分析については、宝塚少女歌劇のレビューについて、雑誌発表論文の準備段階まで進めることができた。これは当初予定を上回るペースであり、引き続き論文の完成と発表を目指したい。 一方で坪内逍遙とその門下生の作品群については、資料調査の結果、予想以上に多くの着眼点が見つかったため、どこまで対象とするか、どの切り口から取り上げるかを決めかねている。とはいえ、課題が明確になりつつあるという点で、一定の進捗は認められるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度には、まず宝塚少女歌劇のレビューに関する論文を完成させ、雑誌投稿による発表を目指す。逍遙作品についても切り口を絞って分析を進める。演劇博物館が再開する9月以降には帝劇女優劇関連の資料収集に着手する。 なお、本年度9月末で現職の任期が満了するため、10月以降も安定的立場で研究を継続できるよう、次のポストの確保に向けて努力する。
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Causes of Carryover |
希望していた国際学会への参加が実現しなかったことから、その分の旅費・滞在費が不要になった。その一方、研究の初年度で、基本的文献や機材の購入が必要であったこと、収集対象とする資料の範囲を当初決めかねていたことから、物品費の支出は当初の予定を上回った。さらに、当初は次年度以降に予定していた宝塚少女歌劇関連の調査を前倒しして実施したことから、年度内に2度、阪急文化財団池田文庫(池田市)で資料調査を行うこととなり、国内旅費は当初の予定額以上に支出することとなった。それでもなお、66,031円の次年度使用額が発生した。 この次年度使用額については、令和元年度の請求額と合わせて使用する。古書資料の購入には、当初の見通し以上の予算が必要であろうと考えるようになったため、その不足分に充当する。
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Research Products
(3 results)