2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 裕子 京都大学, 法学研究科, 准教授 (80551473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 平等取扱い原則 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、日本及びドイツにおける平等法理に関する基礎的な議論を把握するために、主に文献調査を行った。 日本においては、2018年に働き方改革により、所謂「同一労働同一賃金」法が成立した。これによって、パートタイム労働者と有期労働者の均等・均衡処遇を定めるものとして、パートタイム・有期労働法が定められ、また労働者派遣法も改正された。パートタイム・有期労働法8条については、改正前の法律であるパート労働法8条及び労契法20条と実質的に大きく異なるものではないものの、文言が若干具体化されるなど、変更されている部分もある。また、パートタイム・有期労働法9条は、これまでパートタイム労働者のみに存在した差別禁止を有期労働にも拡大するものとして、実務的に非常に大きなインパクトがあるものと考えられる。また、2018年の12月には、改正法に関するガイドラインも公表されたが、これは既に改正前から議論されていた「同一労働同一賃金ガイドライン案」とほとんど同内容のものであり、これによって改正法の規範が具体化したとは言いがたい状況にある。 このような「同一労働同一賃金」法は、フランスやドイツといったヨーロッパに大きな影響を受けているものと考えられる。ドイツにおいても、パートタイム・有期労働契約法が存在しており、パートタイム労働者及び有期労働者の不利益な取扱いを禁止している。これは、日本におけるパートタイム労働者、有期労働者の差別禁止規定(パートタイム・有期労働法9条)のように(職務内容、人材活用の仕組みの同一性要件を充たす場合の)正当化の余地がないルールではなく、実質的な理由があれば区別も許されるというものである。そして、この実質的な理由に当たるかどうかの判断は、労働者一般に妥当する、平等取扱い原則と同様の審査基準を用いて判断される(=パート・有期に特別な内容のものではない)ことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、日本及びドイツにおける平等法理に関して、現在行われている議論を把握するため、主に文献による調査をすることを予定していた。ちょうど、日本においては働き方改革による法改正及びガイドラインの公表がなされるなど、議論が大きく動いているところであったため、今年度は、日本における、いわゆる「同一労働同一賃金」法に関する検討を中心に行った。また、ドイツに関しても、近年の労働法上の平等取扱い原則及び一般平等取扱法に関する裁判例を中心に、近年の状況を把握することができ、おおむね順調に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目からは、ドイツにおける労働契約に対する内容規制について、とりわけ2002年の法改正前後での変化を中心に、文献調査により議論を把握する予定である。内容規制に関する資料は、裁判例・学説ともにかなりの量があると予想されるため、これには1年以上かかると予想している。これと並行して、平等法理との関係や、共通する考え方について、ドイツにおける労働市場の構造も視野に入れつつ、検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度にオーストリアにおいて調査を行ったが、当初の予定とは異なり、大学運営費により渡航費等を支出することができたこと、及び購入予定であった書籍の発売日が遅れたことから、その部分の予算について残額が生じている。この部分は、次年度の文献購入費及びドイツでの現地調査のために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)