2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K17977
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
橋本 良太 順天堂大学, 医学部, 助教 (60433786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | システイン / シスチン / マクロファージ / 酸化LDL / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸の一種であるシステインは、色素沈着や二日酔いの改善などのサプリメントとして広く利用されている。しかし近年、過剰なシステイン摂取が糖尿病を悪化させる可能性が報告された。さらに我々はin vitroの結果ながらシステインの代謝物であるシスチンが動脈硬化を増悪させる可能性を示すデータを得ていた。そこで、「システインの過剰摂取に起因する動脈硬化の増悪の評価及び機序」ならびに「副作用を出さない最適なシステイン摂取量」を明らかにし、システイン摂取の対応策を提示することを最終目的として本研究をスタートした。 動脈硬化の発症過程には(A)~(C)の3つのポイントがあり、システインが(A)-(C)のそれぞれの過程に影響するかどうかをin vitroにて検証した。 (A)「血管内皮細胞が障害される」 血管内皮細胞にシステインなどを添加し、死細胞染色の蛍光色素であるヨウ化プロピジウム (PI)で染色される細胞の割合をフローサイトメトリーにて測定することで、細胞障害の程度を定量した。システインおよびシスチンは血管内皮細胞を障害しなかった。 (B)「血液中のLDLコレステロールが内膜に入り込み、酸化を受ける(酸化LDLの産生)」酸化LDLをELISAにて定量したが、システインおよびシスチンはLDLの酸化に影響しなかった。 (C)「マクロファージが内膜中の酸化LDLを貪食しコレステロールを貯めこむことで血管を肥厚させる」 マクロファージに対して蛍光標識された酸化LDLコレステロールとシステインなどを添加した後、マクロファージ内の蛍光強度の増大をフローサイトメトリーにて測定することで、酸化LDLの取り込みを評価した。システインは酸化LDLの取込みには影響しなかったが、シスチンは取込みを促進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は「動脈硬化の発症過程におけるシステインの作用をin vitroで解明すること」であり、予定していた実験はすべて行った。そして5. 研究実績の概要で述べたように、「マクロファージの酸化LDL取込みをシスチン(システインの代謝物)が促進する」データが得られたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、「システインの過剰摂取に起因する動脈硬化の増悪の評価及び機序」および「副作用を出さない最適なシステイン摂取量」を明らかにし、システイン摂取の対応策を提示することである。当該年度の研究成果として「マクロファージの酸化LDL取込みをシスチン(システインの代謝物)が促進する」データが得られたが、その作用機序を解明することが目的達成に必要な新たな課題である。そこで、本年度は「この新たな研究課題」ならびに当初から予定していた「マウス(in vivo)にてシステインの摂取量と副作用の関係をモニタリング」を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた実験はすべて行ったが、所要額よりも実支出額が少なかったため次年度使用額が生じた。 8. 今後の研究の推進方策で述べたように検証すべき新たな課題が生じたため、生じた次年度使用額はこの課題を検証するために使用する予定である。また、当初から予定していた「マウス(in vivo)にてシステインの摂取量と副作用の関係をモニタリング」を実施するためにも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)