2008 Fiscal Year Annual Research Report
人工変異体を用いたヘモグロビンの引き金説の検証および酸素運搬分子メカニズムの解明
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19579002
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藝 弥生 Kanazawa University, 保健学系, 助教 (00452110)
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Keywords | ヘモグロビン / 酸素運搬機能 / 四次構造変化 / 引き金説 |
Research Abstract |
ヘモグロビン(Hb)は血液中の酸素濃度に応じてその立体構造を酸素親和性の高いR型または酸素親和性の低いT型に変化させることによって、効率よく酸素を運搬しているとされている。この構造変化の引き金は、ヘム鉄と共有結合している近位Hisの位置が変化することである(引き金説)とされているが、未だ推測の域を出ない。そこで、引き金説を検証するために遺伝子工学によりα鎖の近位HisをGlyに置換した人工変異体、Proximal cavity mutant Hb(PCMH)を用いて以下のことを行った。 1. PCMH(α鎖近位His→Gly)の酸素運搬機能を今井式酸素平衡曲線自動記録装置により解析した。その結果、Hb 1分子に結合できる4分子の酸素のうち、1、2段階目の酸素はα鎖ヘムに結合するが、β鎖ヘムに結合する3、4段階目の酸素は結合しにくく、立体構造はT型のまま変化しないことが判明した。また、Bohr効果はα鎖ヘムではpH 7.4-8.4でみられ、β鎖ヘムではpH 6.9-7.9では全くないが、pH 8.4にしたときだけみられた。Bohr効果に貢献しているアミノ酸残基、α1Val、α122His、β146Hisが脱プロトン化することで立体構造がT→R型へ変化すると考えられた。以上のことから、T→R型への構造変化はα鎖の近位Hisの動きがひとつの引き金ではあるが、N、C末端のアミノ酸残基の脱プロトン化によっても起こることが示唆された。 2. PCMH(α鎖近位His→Gly)のヘムの構造を可視共鳴ラマン分光法により解析した結果、ヘムの骨格や側鎖の振動モードは正常Hbとほぼ同じで、ヘムの構造にはα鎖のヘム鉄-近位His結合の影響は少ないと考えられた。`今後はさらに精査し、ヘム鉄-近位His伸縮振動モードなどを中心に立体構造解析をする予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Reduction in hemoglobin-oxygen affinity results in the improvement of exercise capacity in mice with chronic heart failure2008
Author(s)
Watanabe T, Takeda T, Omiya S, Hikoso S, Yamaguchi O, Nakano Y, Higuchi Y, Nakai A, Abe Y, Aki-Jin Y, Taniike M, Mizote I, Matsumura Y, Shimizu T, Nishida K, Imai K, Hori M, Shirasawa T, Otsu K.
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Journal Title
Journal of the American College of Cardiology 52
Pages: 779-786
Peer Reviewed
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