2009 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛虫ヤコウチュウの核及びミトコンドリアの先行的小規模ゲノム解析
Project/Area Number |
19580203
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 浩 Kanazawa University, 自然システム学系, 准教授 (20272932)
|
Keywords | ゲノム / 核 / ミトコンドリア / 渦鞭毛虫 / 赤潮 / 原生生物 / 進化 / アルベオラータ |
Research Abstract |
近年、繊毛虫テトラヒメナとヒメゾウリムシのゲノムプロジェクトが終了した。それらの解析によれば、テトラヒメナ全28,000遺伝子のうち他の生物の遺伝子との相同性が確認されたのはおよそ12,000遺伝子だけで、残りの16,000遺伝子は繊毛虫特異的な遺伝子であることが判明した。また、本研究室で行った分子系統解析(β-チューブリン、Hsp90)では、ヤコウチュウは、渦鞭毛虫類の中でもっとも祖先的な系統的位置を占める古い系統のひとつであることが判明した(Fukuda & Endoh, Eur.J.Protistology 44 : 27-33, 2008)。これらのことはきわめて示唆的である。繊毛虫類に比較的近縁な原生動物であるヤコウチュウは、赤潮生物を多く含む渦鞭毛虫類に特異的な遺伝子を多数持つことが予想される。このような遺伝子の存在は、他の生物に影響を及ぼすことなく、ヤコウチュウをふくめた渦鞭毛虫類の増殖を制御するための新たな方法をもたらす可能性が大きい。全体として、葉緑体をもたない渦鞭毛虫類の基礎研究が不足している現在、小規模とはいえ祖先的渦鞭毛虫の核およびミトコンドリアゲノム研究は、さまざまな分野に予想もできない重要な貢献をする可能性がある。 核ゲノムについては、一回の培養から得られるRNAの収量がきわめて少ないため、現在も小規模ながらcDNAライブラリーを作成し、解析遺伝子数を増やしつつある。cDNAライブラリーの規模を大きくするための方法を検討しているが、残念ながら現在のところ良い方法は見つかっていない。ヤコウチュウのミトコンドリア遺伝子については、Cox1遺伝子以外は同定されていない。一方、ヤコウチュウよりも古い系統であり、もっとも祖先的な渦鞭毛虫であるオキシリス(Oxyrrhis marina)のmtDNAの単離に成功し、ほぼゲノムの全貌が明らかになった(論文準備中)。
|