2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトY-ボックス結合蛋白1の核内移行機序と癌増大と耐性獲得への役割
Project/Area Number |
19590324
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
桑野 信彦 Kurume University, 医学部, 教授 (80037431)
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Keywords | YB-1 / 核内局在 / 多剤耐性 / 癌増殖 / EGF受容体 / エストラジオール受容体 / がんバイオマーカー / Aktシグナル |
Research Abstract |
YB-1はコールドショックドメインをもつDNA/RNA結合タンパクであり,転写制御のみならずmRNA安定化,翻訳制御また障害DNA修復などに関与する多機能を示す。我々は本研究で,YB-1の核内局在のメカニズムとがん増殖と耐性獲得への関与について,1.YB-1の核内移行が放射線や抗がん剤処理によるヒト多剤耐性を担う代表的なABCトランスポーターMDRI/ABCB1遺伝子の発現上昇に関与していることを培養系がん細胞ならびにヒトがんで明らかにした。すなわち,多剤耐性獲得の重要なバイオマーカーであることを示した。2.YB-1の血清や抗がん剤ストレスによる核内への移行はin vitroとin vivoでPI3K/Aktの阻害剤で抑制されることからAktによるYB-1の活性化が重要であることを明らかにした。3.培養系ヒト乳癌や卵巣癌細胞においてEGF受容体ファミリータンパク(EGFR,HER2など),CXCR4やホルモン受容体ERαの発現にYB-1が重要な働きを示すことを明らかにした。4.ヒト乳癌や卵巣癌患者において生存率とYB-1の核内局在が有意に相関すること,さらにHER2,CXCR4,ERαまた耐性関連MVP/LRPの発現とも有意に相関することを病理免疫組織学とバイオ統計学分野との共同研究で明らかにした。以上の研究から,YB-1の核内局在はヒトがんの多剤耐性のみならずがん増殖やホルモン応答の鍵となるバイオマーカーであるという新しい知見を得た。YB-1を標的とした新しいがん診断と治療を展開することが今後の重要な課題である。
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