2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトY‐ボックス結合蛋白1の核内移行機序と癌増大と耐性獲得への役割
Project/Area Number |
19590324
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桑野 信彦 Kyushu University, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任教授 (80037431)
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Keywords | YB-1 / YB-1核内局在 / 多剤耐性 / EGF受容体ファミリー / 乳癌 / P-糖蛋白質 / MVP / LRP / エストラジオール受容体 |
Research Abstract |
Y-ボックス結合蛋白-1(YB-1)はコールドショックドメインを持ちDNAやRNAに親和性を示す。核内ではがんの多剤耐性を担う代表的なABCトランスポーターであるP・糖蛋白質のABCB1/MDR1遺伝子の発現に関与しシスプラチン反応および活性酸素障害核酸の修復活性を示すことを明らかにしてきた。我々は本年度、以下のことを新たに見出した。(1)YB-1のノックダウンによりがん増殖が著明に阻害された。そのメカニズムの一つにDNA複製と関連するCdc6が関与することを見出した。(2)横紋筋肉腫や卵巣癌患者において、YB-1のがん細胞での核内局在がP-糖蛋白質やMVP/LRPなどの多剤耐性関連タンパク質の発現や予後不良と有意に相関した。(3)ヒト乳癌細胞において、YB-1ノックダウンによりEGF受容体(EGFR)ファミリー、CXCR4やエストラジオール受容体(ERα,ERβ)などの発現が抑制された。(4)乳癌患者において、YB-1の核内局在は予後不良因子であり、さらにHER2やERα発現と有意に相関することが観察された。同様の結果が肺癌患者でも観察されている。以上の結果から、YB-1はがんの多剤耐性の獲得だけでなく、がん増殖やホルモン応答を制御する極めて重要なバイオマーカーであることが示された。従ってYB-1を標的とすることによって、がんの耐性克服だけでなく、がん増大や転移などの克服にも有用ながん治療戦略が期待できると考えている。
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