Research Abstract |
われわれは,腎不全において,血清中に蓄積するインドキシル硫酸が,骨の副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抵抗性の原因になっていることを,これまで動物モデルを用いた複数の実験ですでに証明していたが,本年度は,その機序を解明するために,骨芽細胞を使った実験を行い,インドキシル硫酸が細胞膜の有機酸トランスポーターを通じて細胞に入り,酸化ストレスを惹起することによって,PTHの作用を減弱させるとともに,PTH受容体のdown regulationをも惹起していることを示した.さらに,このインドキシル硫酸による酸化ストレス機序が,実際の透析患者にも骨代謝に影響をしているのかを検討中である. また,ストレプトゾトシンによる糖尿病マウスや,日本人の2型糖尿病のモデルであるSDTラットにおいて,骨芽細胞機能の抑制に酸化ストレスが強く関与していることを明らかにした.さらに抗酸化作用のあるthioredoxin-1の過剰発現マウスを用いた実験で,酸化ストレスの改善に伴い骨芽細胞機能が改善し,骨密度の低下も予防されていることも示した. 一方,生物活性を有する新しいPTH分子に関しては,その存在を示す検査値の異常(whole PTH/intact PTH比の逆転現象)を示す症例の蓄積とその臨床的特徴の解析,ならびに検体の収集を行なった.この新規分子の直接アッセイ系の確立については,必要な抗体等の入手に手間取り,準備が終了した段階である.
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