Research Abstract |
幹細胞を用いて,神経疾患や血液疾患などの多くの疾息を治療しようとする試みが国際的に広がっている。その際,移植に用いる細胞・組織を幹細胞から分化させることが必須であり,特異的な機能を有する細胞を安定的かつ効率よく産生することが重要な課題となっている。このような目的のため,幹細胞の分化誘導にレチノイン酸が頻繁に用いられているが,レチノイン酸によって転写誘導を受ける遺伝子の機能や役割については未知の部分が多い。そこで本研究は,レチノイン酸によって発現誘導される遺伝子の一つであるietinoic acid-inducibfe gene(RAlG)に着目して,この分子が幹細胞の分化にいかなる役割を果たしているかを明らかにすることを目的として行った。 まず,レチノイン酸によってマウスES細胞を処理した場合のRAIG遺伝子群(RAIG1,RAIG2,RAIG3,GPRC5D)の発現プ回ファイルを解析した。その結果,RAIG1は未分化ES細胞に発現しておらず,レチノイン酸刺激による発現誘導は観察できなかった。一方,RAIG2,RAIG3,GPRC5Dlま未分化ES細胞には発現しておらず,レチノイン酸刺激によって発現量が顕著に上昇した。次に,ES細胞を様々な細胞に分化させた時に,RAIG遺伝子の発現量が変化するか否かを調べた。その結果,心筋細胞や神経細胞に分化させた時,RAIG2,RAIG3,GPRC5DのmRNAの発現量が上昇した。また,RAIG3に対する特異的抗体を用いてウエスタンブロ外解析を行ったところ,神経分化に伴ってRAIG3の蛋白質量が上昇することが確認できた。以上の結果,細胞分化に伴ってこれらRAIG遺伝子の発現誘導が起こることから,RAIG分子が細胞の分化に関与している可能性が示唆された。
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