2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19651012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 雅文 The University of Tokyo, 産学連携本部, 特任教授 (40422464)
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Keywords | ダム排砂 / 嫌気性分解 / 酸化還元電位 / ダム湖堆積物 / 溶存酸素 / 分子量分画 |
Research Abstract |
平成19年度は、排砂に伴う影響を検討する上で基本的な要素である溶存酸素について検討した。本研究で対象とした富山県黒部川出し平ダムなどの排砂式のダムではダム機能を維持するため、ダム堰堤に建設された排砂ゲートからダム湖堆積物を下流に排出することを前提として設計されている。ダム湖堆積物は、時間の経過とともに嫌気性分解が進行するため、排砂した場合の下流域での生態系への被害を最小限度に押さえる必要性から、嫌気性分解が始まる前に排出することが望ましい。平成19年度は、ダム湖堆積物が嫌気性分解を活発に起こし始めるまでの期間の温度依存性について検討することにより、ダム排砂の頻度決定の指針を与えることを目的とした。富山県黒部川に建設された出し平ダム湖から採取した堆積物を使用し、カラム実験と回分実験を試みた結果を整理した。透明な塩化ビニル管(内径103mm,高さ2m)に、ダム湖から採取した堆積物を底部より1m充填し、その上部1mに蒸留水を注入し、酸化還元電位を連続測定した。25℃において酸化還元電位の急激な低下が見られ、溶存酸素濃度も速やかに消費されると考えられた。それと比較して15℃や5℃では酸化分解反応も緩やかに進行することが明らかとなり、最終的にはいずれの実験装置でも酸化還元電位が-220mV程度に安定した。カラム実験の結果からダム湖堆積物の分解反応を1次反応と仮定し、温度依存性を求めた。得られた活性化エネルギーは83kJ/molであり、通常の生物反応と)ほぼ同程度の値を示した。なお、カラム実験の結果、水温15℃の場合は水温25℃の場合より、嫌気性分解反応速度が約1/3倍となることがわかった。また、回分実験の結果から25℃では、実験開始後約30日間で嫌気性分解が始まることがわかった。これらの実験と湖水温の経年変化から、出し平ダムでは、毎年、湖水温度が上昇する夏前に定期的に排砂することが必要であるとの結論を得た。
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Research Products
(1 results)