2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19653012
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柴尾 健一 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 助教 (70448398)
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Keywords | 国民国家 / 戦時医療 / ジェンダー / 博愛 / 看護 |
Research Abstract |
本研究では、日清・日露戦争期における戦時衛生事業を言説分析ならびに実証分析の両面から総合的に検証を行った。軍部がすすめた戦時衛生事業を検証する場合、特徴は、日本赤十字社(以下日赤と略記)の活動、なかでも女性活動なしでは同事業が円滑に進まない点にあった。それ故まず言説分析では、女性をめぐる言説分析を1890年代から1900年代に出版された女性総合雑誌、女性と医療に関係した国定修身教科、そして日本赤十字社が公刊した資料を対激に検証した。 次に実証分析では、日清・日露戦争期の戦時衛生事業を軍衛生部の監督指揮下にあった日赤活動に着目し検証を進めた。ここでは、刊行・未刊行史料である日赤救護記録ならびに陸軍の公式史料から戦時衛生事業(活動)の動向を可能な限り丹念に検証し、言説が実際の救護活動にどのような影響を及ぼしていたのかを明らかにした。 このような言説分析ならびに実証分析を進めた結果、本研究では、次の点が明らかになった。 (1)軍部主導で進められた戦時衛生事業の特微は、日清・日露戦争期を通して、陸軍衛生部と日赤の関係が親密化していく段階にあり、相互の親密な関係抜きには同事業が円滑に機能することがなかった点、 (2)ならびにこの親密な関係の構築は、「博愛」という言説を共有することによって創り上げられた点、 (3)そしてこの「博愛」をめぐる言説空間は、皇后を頂点とした女性秩序を形成されていた点ですべて一貫しており、日清・日露戦争期において女性を従軍看護婦として動員するために重要な言説として機能していた点、以上3点が明らかになった。 ※なお本研究結果は、九州大学出版会から公刊予定である。
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Research Products
(2 results)