2007 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子IRF8による細胞分化マスター制御因子活性バランスの調節
Project/Area Number |
19659250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 智彦 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 准教授 (50285144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 隆幸 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教 (50343413)
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Keywords | 発生・分化 / 遺伝子 / 免疫学 / 癌 |
Research Abstract |
血球系特異的転写因子Interferon Regulatory Factor 8 (IRF8)はミエロイド系前駆細胞のマクロファージへの分化を促進する一方、顆粒球への分化を抑制する。IRF8欠損マウスが慢性骨髄性白血病(CML)様の病態を呈し、多くのヒト骨髄性白血病においてIRF8の発現が失われていることから、IRF8はヒト白血病において重要ながん抑制因子である事が示唆されている。当研究は、IRF8の機能解析を通して自然免疫細胞の分化機構、ひいては細胞分化の基本原理を理解し、ヒト白血病に対し新しい病態理解と治療法を確立するための基盤を築くことを目指している。平成19年度においては、IRF8と顆粒球系のマスター転写制御因子C/EBPαが結合する事を、一過性強制発現の系で明らかにすることができた。さらに正常マウス骨髄細胞を用いて内因性のIRF8とC/EBPαの結合を検出することを試みているが、おそらく両因子が発現するのが特定の分化段階のみであるためかまだ成功しておらず引き続き条件を検討している。なお、マイクロアレイ解析によってIRF8の標的遺伝子の検索を行ったところ、IRF5が著しく強く誘導されるという予想外の結果を得た。これを受けてIRF8によるミエロイド系細胞の分化やToll様受容体シグナルの調節が、IRF5を介して行われているのではないかと考え解析を進めたが、IRF5単独の遺伝子導入ではIRF8欠損細胞の異常を是正できなかったため、その可能性は否定的と結論した。これと関連して、IRF5欠損マウスにおけるFasによるアポトーシス感受性を調べたところ、肝臓におけるFas誘導性アポトーシスがIRF5依存性である事、さらにはTLR9シグナルによる樹状細胞のFas感受性獲得にもIRF5が必須であるという新知見を得、これを論文発表している(Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.,105:2556-2561,2008)。以上のように、研究はおおむね順調に進み、さらに予期しなかった展開も見せ、その成果を発表するに至っている。
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Research Products
(1 results)