2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710056
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
加藤 宝光 National Institute of Radiological Sciences, 重粒子医科学センター, 研究員 (30450430)
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Keywords | 放射線 / DNA損傷 / DNA修復 / 重粒子線 |
Research Abstract |
直線的に進み、その軌跡に沿って物質をイオン化する重粒子線の入射角度が培養細胞に対して、どのような効果をもたらすのかを検討した。重粒子線(鉄線、エネルギー500MeV/n、LET200keV/μm)を同一線量照射した場合、単層培養した細胞に対して垂直方向からの照射の方が、水平方向からよりも高い生物効果を持つことが確認された。生物効果は、コロニー形成法による生存率、および染色体損傷解析によってなされた。 高エネルギーを持つ鉄線では、照射サンプル内(数mm)での有意なLET変化、線量減衰は物理データからは見られない。よって、この入射角度により生物効果の変化は、生物反応によるものである可能性が高い。得られた染色体損傷のデータでは、水平、垂直方向照射で得られたDicentric, Centric Ringと言った交換型の致死損傷の数はほぼ同じであったが、Acentric Fragment, Terminal Deletionと言った必ずしも細胞死に結びつかない欠失型損傷において、垂直方向からの照射で有意な増加が見られた。 垂直方向からの照射では、細胞あたりの照射トラック数は多いが、粒子あたりのエネルギー付与は小さくなる。一方、水平方向からの照射では、細胞に当たる粒子数は少ないが、粒子は細胞内を長く通過し、多くのエネルギーを核内に落とす。細胞核内は、DNAの混ざりものではなく、染色体ドメインとして高度に組織化されている。水平方向からの照射では、ドメインを多数通過する形で損傷をつくり、染色体交換を引き起こしやすい。垂直方向からの照射は、多数の染色体ドメインを通過し、エリア内で損傷を誘発する。FragmentやDeletionを引き起こし、それらが蓄積することで、細胞死につながっているのではないかと考えられる。また、細胞を浮遊状態にし、照射したところ、放射線による致死効果は、垂直、水平の間となった。
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Research Products
(5 results)