2007 Fiscal Year Annual Research Report
「伊年」印草花図を中心とする宗達派草花図の研究-北陸と京都での需要をめぐって
Project/Area Number |
19720028
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
岡田 梓 Japan Women's University, 人間社会学部, 助手 (60440088)
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Keywords | 美術史 / 日本 / 宗達派 / 草花図 / 北陸 / 京都 |
Research Abstract |
北陸に伝存している伊年印草花図作品の情報を収集すべく、博物館での実験調査および所蔵館の学芸員からの聞き取り調査を行った。石川県立美術館では、俵屋宗雪筆「萩に兎図屏風」、伊年印「四季草花図屏風」、喜多川相説筆「草花図屏風」、喜多川相説「秋草図屏風」の計4点を調査した。これらの作品の出所を所蔵館の学芸員にインタビューしたところ、業者から購入するなど、ほとんど前の所有者の情報にたどり着くことができないなかで、わずかに俵屋宗雪筆「萩に兎図屏風」だけは、金沢市内で寛永の頃より菓子店を営む旧家から寄贈されたものであることがわかった。この旧家にどのような経緯で伝わったのか、またどのように扱われていたのかについては、今後も調査を続ける必要があるだろう。また、同館が伊年印草花図が北陸に多く伝存している理由として、嫁入り道具として用いられたことを挙げているため、それがが史実であるのか、金沢市立近世資料館を中心に史料調査を行った。現状では具体的に伊年印草花図や宗達派との関係性を示すものは見つかっていないが、前田家姫君の婚礼に関する史料を中心に調査をしている。 富山県内にも伊年印草花図が分布しており、黒部市美術館では伊年印「四季草花図屏風」、喜多川相説筆「四季草花図屏風」の2点を熟覧・調査した。所蔵館に聞き取り調査をしたところ、後者は地元の旧家が旧蔵者であることがわかったが、かつての扱われ方や経緯については、寄贈時には既に曖昧なものになっていたという。ここでも、金沢辺りからの嫁入りがあった際に持ち込まれたのではないか、との推測が聞かれた。このように北陸での需要の背景には「嫁入り道具」説が根強く広がっている。この裏付け調査を継続し、意義を探ることにより、宗達工房の実像に迫ることになる。
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