2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国新石器時代における食品加工具に関する基礎的研究‐使用痕分析からのアプローチ‐
Project/Area Number |
19720205
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
加藤 里美 Kokugakuin University, 研究開発推進機構, 講師 (40384002)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 使用痕 / 食品加工 / 粉食文化 |
Research Abstract |
中国新石器時代の食品加工具である「すりうす」の使用痕分析を通して、食品に対する働きかけを分析し生産活動と多様な社会(集団)の「動態」、それに伴う文化要素を明らかにすることを研究の目的としている。そのために、平成19年度には「すりうす」の使用痕サンプルを作成し、用途と加工対象物別に使用モデルの構築を開始した。そのサンプルをもとに、本年度には実物資料を観察し、「すりうす」の加工面の肉眼観察と顕微鏡レベルにおける使用痕分析を開始した。これらの成果に基づいて、研究期間井田内には「すりうす」の使用目的と食品加工の実態、加工対象物を明らかにすることが目標である。 本年度開始した実物資料の観察については平成20年1月に中国調査を実施した。中国山東大学東方考古学研究センターおよび山東省文物考古研究所、縢州市博物館所蔵の資料、37点について肉眼観察による熟覧・顕微鏡観察・写真撮影、約200点について肉眼観察し、サンプルの使用痕と比較検討した。未観察の資料があるものの、実物資料における使用痕には少なくとも2種類に分かれ、かつ「すりうす」下石の磨面の使用方法についても複数の方法が指摘できるなどの結果を得られた。また、サンプルとの比較においては、使用痕の2種類のうち1種類と類似することが判明したが、これについてはまだ確定するには比較資料数が不足していると判断し、サンプル数を増加することと実資料観察数を増やして傾向をつかむことが必要となった。また、金属顕微鏡(OLYMPUS)を使用して観察したが、「すりうす」の下石資料が大型のものについては、顕微鏡のアーム長が不足し、最も使用痕跡が明確と考えられる中心部分が未観察となってしまうなど、平成21年度の調査時には改善すべき点も明確となった。 これらの過程で、「すりうす」の使用方法、加工対象物などについて、一定の目測を立てることができた。来年度以降は、サンプル数、実物資料の観察数を増やし、使用痕分析と使用方法、加工対象物などの要素について類型化し、中国における粉食文化の成立に関する研究に有効な結果を導き出すことを目標とする。
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