Research Abstract |
本研究の目的は,太陽系に存在する小天体(小惑星・彗星)表面における探査ロポットの自己位置同定の技術を確立することにある. 小天体はその多くが,いびつな形状をしている.また,1つの天体がラブルパイルと呼ばれる複数の岩盤の集合体である場合,その内部には多くの空隙層を含むため,密度が一様でない.このため,天体の重心を基準とした地心経緯度とローカルな重力加速度方向を基準とした測地経緯度では,その値が大きく異なる. 小天体表面の興味深い地形は,小天体に接近した探査機(例えば,日本のハヤブサ探査機)がその外部から撮影した画像をもとに選択される.このため,その地点を座標として与える場合,地心経緯度が使われる. 一方,小天体表面のロボット単独で,カメラや重力計,太陽センサを用いてその座標を求めることが原理上可能である.しかし,そこで求めた座標は測地経緯度で表現される. 以上の理由から,興味のある目的地を地球から指示した場合,地心経緯度と測地経緯度が大きく異なるため,ロボットを意図した目的地に収束させることができない. そこで,本研究では,ロボットを小天体表面まで運搬した母船が電波による支援を行なって,ロボットの小天体表面における地心経緯度を準リアルタイムに求めるシステムの検討を行なう.本研究で具体的に実施する項目は ・ シミュレーションによる数値解析 ・ 地球上でのGPS衛星からの電波を使用した摸擬実験 の2点である.平成21年度は,異なる母船の運動を仮定したシミュレーションと,GPS衛星を利用した実験を行なった. ・ 異なる母船の運動に関するシミュレーション検討 平成20年度までの検討は,母船が小天体を周回運動している場合に関するシミュレーションと実験によるものであった.GPS衛星は地球を周回しているため,本方式における位置同定精度を論じるためには,シミュレーションと比較するためには,母船が小天体を周回運動している場合のみ考慮せざるを得ないためである. 平成21年度は,母船と小天体が太陽の回りをほぼ同じ公転運動をしている場合や,母船が小天体回りをガスジェットを用いて軌道変換している場合におけるシミュレーションを行なった. ・ 実験 平成20年度に製作した装置による実験を再び行ない,ターゲットとしている大きさ1kmの小天体表面での期待できる位置誤差の導出を行なった.この導出は. (1) 地球上の位置誤差を,小天体と地球のスケールファクタを用いて変換する. (2) 測定システムで得られた生データから,GPS衛星システムにおける測定距離の誤差分布を求める. という処理で行なっている.
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